全国中学生人権作文コンテスト 入賞作文で道徳授業 【対 象】中学生(小学校高学年でも授業可能) 【ねらい】 隣に座っていたおばさんの取るべき行動について話し合うことを通して、人との接し方についての自分なりの考えを確かめ、他の人々に対しての思いやりの心情を深める。3-(2) 【学習内容】 (1)人との接し方についての考えを深めること ・
先入観だけ、あるいは、外見だけで人を判断して行動すること、発言することは、相手に対して思いやりをもっていないことだと理解できること ・
自分の行動が誤りであった場合に、すぐに謝るなどの修正を行うことの大切さが分かること (2)他の人々に対しての思いやりの心情を深めること ・
自分のこれからの生活場面を想定し、先入観や外見で判断しないという思いがもてること ・
これまでの自分の生活の中で、先入観や外見で判断していることの具体を想起しようとすること、あるいは、具体的な行動や発言が想起できること 【資 料】「人との接し方」 『第28回全国中学生人権作文コンテスト入賞作文集』 法務省人権擁護局・全国人権擁護委員連合会 H21.2.27 詳しくは、下記Webにて。 http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken111.html (掲載される期間は次回コンテストまでと思われます) 電車に乗った中学校二年生。「だれが見てもチャラチャラしてると言えるような高校生ぐらいの女の人が、優先座席に座って、耳にイヤフォンをつけ、携帯電話をさわって」いた。そこに、たくさんの荷物と杖をもったおばあさんが乗ってきた。隣に座っていたおばさんが、女の人に対して、おばあさんに席を譲るように注意。 目に涙をたくさんため、じっとうつむいたままやがてそろそろと立ち上がった女の人は、左足をひきずり、よろよろとしながらあわてて逃げるように次の駅で降りた。 注意したおばさんは気まずい表情をしてうつむいたまま。 筆者は、「おばさんはどうすれば良かったのか、あるいはどうすれば、女の人は傷つかずにすんだのだろうか、「思いやりをもって人と接するということ」はどういうことだろうかと自問する。 【学習過程】 @
優先席について知っていることを発表し合う。(5分) ※
発問1:「電車やバスの優先席について知っていることを教えてください?」 ※
お年寄り、体が不自由な人、妊婦さんなど、立っていることがつらく、難しい方用の座席のこと。優先座席、シルバーシート、専用席、おもいやりゾーンなど会社によって名称が異なることも。優先席付近では、携帯電話の電源を切るなどの配慮が求められている。女性専用車、携帯電話オフ車両などもある。 A
資料前半を読んで話し合う。(10分) ※
優先座席に座っているチャラチャラとしている女の人に対して、隣に座っていたおばさんが座席を代わるよう注意し「すると乗客のつめたちまなざしが、みな、その女の人に向けられました」までを読み聞かせます。 ※
発問2:「となりのおばさんが女の人を注意したとき、周りの人はどう思ったでしょう。」 ※
@おばさんは勇気のある人だ。すばらしい。A周りのいる自分たちが注意できればいいのだけど、代わりに注意してくれてよかった。B女の子は、人から言われなくても自分から進んで席を譲ってあげればいいのに。など、@おばさんに対する意見、A自分たちに対する意見、そしてB女の人に対する意見、Cその他、などに分けて板書します。 ※
「意見が出そろったところで、皆さんが、周りに座っていたり、立っていたりしたら、これらの3つのうちどの考えに近いでしょうか。」と問い返して、自分事として捉えさせるようにします。出た意見を一覧して再度、考えさせることは、たとえ短い時間であっても大切な学習だと考えます。 B
資料後半を読んで話し合う。(25分) ※
「『おもいやりをもって人と接するということ』とはどういうことだろうか。」まで読み聞かせます。 ※
発問3:「隣のおばさんに注意され、何も言えずに、目に涙をたくさんため、じっとうつむいたままの女の人は何を考え、どう思い、席を立ったのだろうか? (あるいは、なぜ、女の人は、自分は足が不自由だからここに座っているのです、と言わなかったのだろうか?と直接問うこともできます。」 ※
@今、ここで、足が不自由だと言っても信じてもらえないなら、黙ってここを去ろう。Aまた同じことを言われた。私に正当な理由があって優先席に座っているのをいつも信じてもらえない。説明までして座ろうとは思わない。B人は、いつも外見だけで判断し、私がルールを破っていると思い込んでいる。そんな人たちが周りにいるところに座っているのはこっちから願い下げだ。C私は足が不自由だけど、荷物をたくさん持って杖をついているおばあさんよりも元気なのだから、言われたとおり席を譲ろう。など、女の人の気持ちを様々想像します。「外見から判断された」「正当な理由があるのに信じてもらえない」などは、子どもたちの生活場面においてだれもが経験しているので、その経験を思い出すなどさせることで、女の人に共感できるようにする。 ※
発問4:「この場面で、おばさんはどうすれば良かったのだろうか? (あるいは、そばで見ていた筆者はどう行動すれば良かったのだろうか? あるいは、あなたがすぐそばにいたらどうしたら良かっただろうか?)」 ※
筆者の素朴な問いに、みんなで答えるという活動です。@すぐに、女の人を引き留めて、自分が席を譲って、その女の人に座ってもらったらよい。そうすれば、荷物を持ったおばあさんも座れる。Aすぐに、自分の発言が間違っていたことを謝るべきだ。この二つに集約されると思われます。 ※
「女の人は、どうしてもらうと最も嬉しいだろうか?」と考える視点を移動させて、更に考えを深めるようにします。自分の勝手な思い込みで人に迷惑をかけてしまうことは、誰にもあることです。そんなときどう行動するかがとても重要です。 ※
最後に、注意したおばさんだけではなく、周りにいた人たちみんな同じ立場であることにも触れ、最終的に、「先入観だけ、相手の外見だけで発言したり、行動したりすることは、相手に対して思いやりの心をもっていないことである」とまとめます。 C
これからの自分の生活を考えながら、授業の感想を書く。(10分) ※
発問5:「先入観だけで、あるいは、外見だけで発言、行動することの危うさを学びました。これからの自分の生活を予想しながら、授業の感想を道徳プリントに書きましょう。」 |