『しろのあおA』の「捨てネコ」で

動物愛護

【対 象】小学校4〜6年生

【ねらい】 上大岡トメ『しろのあお2』の「捨てネコ」を読みネコに対してどうすればよいか話し合うことを通して、動物の命を育むことの難しさを理解し、今後一層動物を大切にしようとする態度を養う。3-(1)

【学習内容】

(1)動物をかわいいと感じる気持ち

        あお君たちが捨てネコをかわいい、えさをやりたいという気持ち

        自分が飼っているペットや身近な動物に対する親愛の気持ち

(2)お母さんが、あお君たちに伝えたいこと

        本当に飼う気持ちも、飼える保障もないのに、えさをやってかわいがろうとする気持ちの不十分さ

        殺されているイヌ、ネコの数(実態)

        捨てネコなどの命を守ることの難しさ

 

【資料】

『しろのあお』(上大岡トメ 飛鳥新社)

しろのあお 2  小学5年生編

 17「捨てネコ」の章

  空き地(公園?)で3匹の捨てネコを拾った主人公「し   ろのあお」と野球部仲間の「藤崎耕介」「田島貴生」。すぐに牛乳を取りに帰るあお。牛乳をおいしそうに飲むのを見ながら、飼いたいけど「犬がいるんだよなー」(貴生)「マンションだし、ぜったいかーちゃんダメって言う」(あお)とつぶやく。

  そこへ、あおの母親が登場。「あなたたち飼えないんでしょ?かえってかわいそうじゃない?」と言いながら、@「毎年動物愛護センターなどには、たくさんのイヌやネコが保護されていて、そのうち年間約36万匹が誰にも引き取ってもらうことができずに殺されていること」、A「買えない理由はさまざまだけど人間の都合で捨てられることが多いこと」、B「あなたたちがかわいそうと思っても救えるのはほんの一部、その事実は知るべき」などと話して聞かせる。

  あおたちは、「でも、目の前の死にそうな命は、ほうっておけないよ!!」、「オレたちで、飼ってくれる人をさがそう!」と活動を始める。

  現実は、なかなかうまくいかず、たくさんの人に断られる。そして、最後には、耕介が自分の家に頼んで1匹、後の2匹は、あおの姉のピアノの先生に飼ってもらうことに。

  動物の命を守ること(最後まで責任をもって飼うこと)の難しさを実感した3人であった。

 

■ 子どもたちの日常生活で1回は経験したであろう出来事を親しみのあるマンガを通して学習するので、登場人物の気持ちが理解しやすく(つまり、自分たちの気持ちを出しやすく)、また、捨てイヌやネコが年間36万頭も殺されているという事実等を知識として正しく知ることで、一層実感をもって、学習することができる。非常に扱いやすい資料。

 

【学習過程】(45分授業)

@        P.117を読んで話し合う。(10分)

        発問1P.117(3人が空き地で3匹の捨てネコを見付け、そのかわいらしさうっとりし、あおが牛乳を取りに帰った場面)を見てください。みなさんは、捨てネコや捨てイヌを拾ったこと、あるいは見たことがありますか?その時にどんなことを感じましたか?」

        P.117を提示して、過去の経験と気持ちを尋ねて、扱う価値と資料への導入を図る。

        その時に自分たちはどうしたかについては、この後のストーリー展開とも関わるので、敢えて尋ねない。

        @ネコやイヌなどの動物がとってもかわいいこと。

        Aネコやイヌが生きていること(当たり前だけど)

        B子ネコや子イヌは、そのままでは、死んでしまう大変弱い存在であること。

        Cそして、捨てる人がいるから捨てネコや捨てイヌがいること(そんな無茶なことをする大人がいる不合理を感じ取ること)の4点を強調し、「今日は、動物の命を守ることについて、みんなで考えていきましょう」と課題を板書する。

 

A        P.119までを読んで話し合う。(30分)

        資料P.119(3人が、牛乳を飲むネコを見ながら、自分の家では飼えない事情を話し合っている時に、あおの母が現れ、「捨てネコにエサをあげたらどうなるかわかってんの!?」「あなたたち飼えないんでしょ?かえってかわいそうじゃない?」と3人の子どもに迫る場面)までを提示して、その後、次の発問。

        発問2「お母さんは、どうなると言っているのでしょうか?(なぜ、かわいそうだと言っているのでしょうか。)」

        いろいろな意見が出るが、(1)エサをあげたら、ネコは、エサをくれた人を頼る。あるいは、ついてくる。→(2)エサをあげた以上、それ以後、知らんふりをすることはできない。→(3)飼う、あるいは、関わり続ける責任が生ずる)→(4)自分の家では飼うことはできないのだから、毎日、ずっとその空き地にエサをやりに来なければならない、→(5)でも、子どもでも、大人でも、そう簡単なことではなく、いつかは、ほったらかしにしてしまう、あるいは忘れることになる。→(6)今、エサをやることは、悪いことではないが、今後も見通しももっておくことが不可欠である。

        その後、P.120の動物愛護センターでイヌ・ネコが年間36万匹殺されていること等の母の話を提示する。その際、様々なWebサイトで、実態を掲載しているものがあるので、併せて提示しても良い。ここでは、正しい数やイヌ、ネコを捨てる人たちの理由など「知識」を得させることが不可欠である。(道徳の時間は、知識を獲得させることが軽視されがちであるが、正しい判断や行動をするために、正確な知識や理解は重要である。通常、道徳の時間の中だけで知識を得させるのは時間的にも内容的にも不十分になりがちなので、他の教科等と関連指導する方法を取る。時間にゆとりがあれば、これらの実態を提示した後、感想を引き出してもよい。

        資料を最後まで提示して、次の発問。

        発問3:「飼い主を捜すも、なかかな見つからなかったときのあお君たちの気持ちを想像してみましょう。」

        (1)動物を飼うことの難しさ、(動物と言えども、命に責任をもつことは難しく、多くの人が二の足を踏むこと)、(2)捨てた人への憤り(この作品では、捨てた人への怒りについてはほとんど感じられないような表現になっている)、(3)自分たちで飼うしかないのかな?という気持ち、(4)今更、動物愛護センターに連れていくことはできないこと、(5)何とも言えない気持ち、(6)その立場になってみないと分からない、などの意見をまとめながら、再度「動物の命に最後まで責任をもつことをは大変難しいことで、それだけに、イヌやネコを飼おうと決めた場合は、安易に捨てたり、愛護センターに連れて行ったりしてはならないこと」を話し、導入で板書した課題と対照できるように板書する。

 

B        授業の感想を書く。(10分)

        発問4:「授業の感想を書いてください。」

        総合的な学習の時間に発展させ、動物愛護運動や自然保護活動などについて学ぶのもよいと考えられる。むしろ、総合的な学習の時間のそのような活動に関連的に指導する道徳の時間として指導する方が自然。

        ちなみに、『しろのあお』の1巻(4年生編)も、道徳の時間に扱える内容がある。

http://sakamoto.cside.com/sakamoto2006/shironoao.htm

        同じく『キッパリ』も道徳で使えます。

http://sakamoto.cside.com/sakamoto2006/kippari.htm