「みんなのなやみ」‘ピアスしちゃダメ?’で

道徳授業開き2

【対 象】中学校

【ねらい】 有希さんの‘ピアスしちゃだめ?’の相談について話し合うことを通して、「自分にとっての親からの『卒業』」を考えることの大切さを理解し、自己を見つめ、自己の向上を図ろうとする意欲を高める。1-(5)

【学習内容】

(1)重松清氏が述べる「我が子」への思い

        赤ん坊が生まれることの感動と育てることの難しさ

        「子どもの体は、親のものである」という気持ち

        「親から卒業する」という事柄があること

(2)自分にとっての「親からの卒業」の具体

        「卒業」の具体的な内容・条件・時期

        「卒業」を考える続けることそのものの大切さ

 

【資 料】『みんなのなやみ』(重松清 理論社)

    この本は、理論社のホームページの『10代の悩み相談室』コーナーにメールで寄せられた質問・相談に対して、重松清氏が回答したもの。取り上げるのは、2章「『からだ』と『恋愛』」の中の「ピアスしちゃダメ?」の相談

     

「おとはなどうしてピアスに反対するんでしょうか?……。いま、母親とケンカ中です。校則で禁止されていても、学校を卒業したらそんな理由は関係なくなると思う。(中略)ただ『ダメだ』といわれるばかりで、どうしてダメなのか、まったくわかりません。(後略)」(P.64 1-7行)の問いについて、重松氏が回答した文章をもとに資料を構成する。

 

【学習過程】(60分授業)

@        相談を読んで話し合う。(15分)

        発問1「有希さん(16歳、高2)の相談について、重松氏の回答を読む前に、みんなで話し合いましょう。あなたなら、どう答えますか?」

        (1)校則で禁止されているから (2)耳に穴を開けることやピアスを買うことにお金がかかるから (3)化膿するなど衛生面で問題があるから (4)オシャレにすることはもう少し後でもいいから、あるいは、オシャレすることはないから (5)体を傷つけることになるから (6)勉強をすることが大切だから などの意見が出る。主張点を明確にするように「問い返し」や「確認」をしながら、板書する。

        複数の理由を指示する子どもが多いと思われるので、「特に、どれが一番の理由?」や「一番弱い理由は何?」などと問い返して、一人ひとりの考えを明確にすることができるように配慮する。(これは、一番を決めさせることがねらいではなく、「一番はどれ」と聞き返すことで、考えが深まったり、明確になったりするから、そう聞き返しているのであります。「比較は、思考を深める」の原則です……)

        「あなたはどう答えますか?」と問わないで、「このお母さんはどんな気持ちで、ダメだといっているのですか?」と問うとすると、後の「重松氏」の回答につなぎやすい(重松氏は終始、親の立場、二人の娘をもつ立場から回答している)。しかし、その分だけ、子どもたちは、「自分事」として捉えさせにくいという短所がある。

        ここで、しっかり個人個人の考えを持たせておかないと、あとの重松氏の回答を受け止めることができない。みんなで合意するような話し合いではなく、論点の整理をする話し合いとする。NHKのしゃべり場のような雰囲気を出す。

 

A        重松氏の回答を聞いて、話し合う。(25分)

        発問2「重松氏の回答を整理してみましょう。」

        重松氏の回答をみんなで読む。国語ではないので、教師が主導して、重松氏の考えを要約する。@親が我が子の誕生に対して感じたことやしたこと(生まれたことそのものへの感動と我が子を守り育てることの難しさ) A我が子の体は、親のものであると自然に感じてしまうこと B親から「卒業」することの大切さと難しさ

        それぞれに具体的な例(例えば、子育ての具体的な事柄)が出ているので、それを通して、納得できるように教師から話をまとめる。

        発問3「重松氏の回答についてどう思いますか?」

        導入で話し合っている「自分たちの回答」と「重松氏の回答」の共通点や相違点を中心に「納得できる」「納得できない」という二つの観点から、子どもたちの意見を発表させ、その理由を発表させる。

        @〜Bのそれぞれについてざっと意見を求めた後、特に「親がわが子の体を自分のものとして感じていること」が「納得できるか」「納得できないか」に絞って意見を交流する。どちらかにまとめる必要はないが、「親が自分たち子どもの体を親のものであると感じていること」に対して、一定の理解を図ることは大切である。(つまり「納得」はできないけど「わからないでもない」程度の理解)

        その上で、親から「卒業」することが、高校や大学を卒業することとは別の意味での「卒業」であることを理解させる。

 

B        自分の回答を書き、話し合う。(20分)

        発問4:「自分にとって、親から『卒業』するとは、具体的には、どんなことがありますか?考えられるだけたくさん、書いてみましょう。そして、それを有希さんの質問の回答、また、自分への回答としましょう。」

        (1)高校を卒業する、大学を卒業するなどの学校歴に関する意見、(2)18歳、あるいは20歳など、年齢に関する意見、(3)経済的に独立することとする意見、(4)精神的に独立することとする意見、(5)自分も家族、子どもをもった時とする意見などを出させる。

        それぞれに、「たとえば?」とか「理由は?」などと問い返すと深まる。また、「○○君の意見と△△さんの意見は、どこが違う?」とか「同じところはどこ?」などと問い返して、考えを広げることが必要。

        それらを通して、様々な意見があることを認め合うとともに、いろいろ考え続けることに意味があることを共通理解し、授業をまとめる。

        感想を学級通信などに載せて、保護者に配付することで、子ども同士の意見の交流を図る。また、学校図書館に数冊購入してもらい、朝の読書などで全員が読むようにする。加えて、保護者の方々にも読んでいただき、その感想を再度、学級通信などに載せる。