クリニクラウン(臨床道化師)で

人間愛の精神を広げる

 道徳の副読本教材として採用されているかどうかはわかりませんが、もし、現在採用されていないとしても、きっと早晩掲載されるだろうな、と思える内容・題材です。

 

【対 象】中学生

【ねらい】 「まんまるの赤い鼻は道化師の心の灯」を読み、塚原さんの生き方について話し合うことを通して、クリニクラウンの活動や闘病生活をおくる子どもの笑顔を育むことのよさを感じ取り、温かい人間愛の精神を深め、他の人々に対し感謝し、思いやろうとする態度を養う。2-(2)

【学習内容】

(1)クリニクラウン塚原成幸(つかはらしげゆき)さんの生き方とそれらへの自分なりの感想

        大学生だった塚田さんの自動車事故後の思い

        塚田さんの震災ボランティアと道化師の捉え

        クリニクラウンの活動とそれへの思い

(2)自分なりの「笑顔を育む」方法や内容

        「感謝・思いやり(人間愛の精神)」=「周りの笑顔を育む」

        自分が「笑顔を育みたい人」や「状況」の具体

 

【資料】

    「まんまるの赤い鼻は道化師の心の灯」(取材・文 吉川良)『PHP No.708』平成19年5月号所載

    クリニクラウンとは、クリニック(病院)とクラウン(道   化師)の二つの言葉を合わせた造語で、臨床道化師のこと。「入院生活を送る子どもの病室を定期的に訪問し、遊びとユーモアを届け、子供たちの笑顔を育む」、「子供は、入院生活が長くなると、子供の生活に大切な、出会いや遊びが制限され、笑顔が減ってきます。クリニクラウンは、遊びや会話による相互のコミュニケーションを通じ、「わ〜、すごい!」という驚きを届けます。遊びながら「楽しい!」という気持ちを起こさせ、笑顔を引き出します。そして「これ何?」「どうやるの?」「こういうこと?」「やってみたい」という子供の想像力と想像力を育みます。」(日本クリニクラウン協会パンフレット)

    詳しくは、日本クリニクラウン公式Webサイト参照。

   http://www.cliniclowns.jp/04_about_cliniclowns.html

 

    大学の時、交通事故にあい、元気になったら道化師にな   り、「自分の体と心を精一杯に使って、誰かに幸せを感じてもらいたい」と、道化師専門劇団を旗揚げした。1995年、阪神淡路大震災の時に、ボランティアとして、3年間、瓦礫撤去作業等に携わった。事故とボランティアを経験し、「道化師も単なるエンターティナーではなくて、欧米で道化師が地域活動のあり方を提案して、住民のつなぎ役になっているように、自分にも何かができるだろう」と考えた。「納得して病院生活を送っている子どもはいません。長い闘病生活を送る内に、思い切り遊んだりふざけたりすることをやめざるをえない状況になるのです。そういう重苦しい空気を変えたいなあ。」と第2のクラウン人生を始めた。「道化師の目から見ると、笑いの効用というのは、(中略)生きている実感をもたせるものだと思います」。

 

【学習過程】(45分授業)

@        道化師についての感想を発表する。(10分)

        発問1:道化師の絵や写真を提示して、知っていることや感想を発表し合う。

        ポータルサイトの画像検索で「道化師」を探せば、かなり多くの写真が見つかる。それを幾つか提示するとよいか。

        子供たちは、観客を笑わせることが仕事だということを知っているので、それを確認した後、「臨床道化師というのがあるのを知っていますか?今日は、臨床道化師の塚田さんの生き方をもとに学習を進めましょう。」と投げかける導入とする。

        自分が病気になったときの経験やその時の気持ちを思い出させ、「長い間病院に入院している子供に笑顔を届ける仕事をしている人がいるんですよ」と投げかけるという導入もある。ちょっと暗くなるのが難。

 

A        「まんまるの赤い鼻は道化師の心の灯」を読んで話し合う。(25分)

        学習内容(1)の3つの・に対応して、それぞれ発問をして話し合うことも悪くない。(資料もそれぞれのところでまでを提示しながら)ここでは、一番最後を訊き、それより前までも一緒に扱うというねらいで、ひとつの発問とする。

        発問2「塚原さんが、第2にクラウン人生を始めようと思ったのは、どんな理由からだろうか。(どんな気持ちからだろうか?)」

        (1)「大学の時事故に遭い、その際、道化師になり誰かに幸せを感じてもらいたいと決心し、道化師の仕事を始めたこと(つまり、道化師が好きで、人を幸せにしたいと考えていた)」に関する意見、(2)「長田でのボランティアの時にも道化師の公演をして、多くの人に喜ばれたこと(つまり、道化師の仕事にやりがいを感じていた)」に関する意見、(3)「人生でいちばん劇的なのは日常であると思えた。そしたら、道化師として自分にも何かできることがあるのではないかと思ったこと(事故と長田との経験を経て塚原さんがもった考え)」に関する意見、(4)「クリニクラウンの活動を知ったこと」に関する意見などが出る。

        発問3(1)〜(4)に共通することは何でしょうか?」

        「人のために働くこと」、「人に幸せになってもらうこと」などの意見が出る。教師は、上記(1)〜(4)に下線を引きながら、「人に幸せになってもらう、道化師だから、人に笑ってももらう」ことが塚原さんの信念だったんだね」とみんなの意見をまとめる。

        そして、「このような無償の行為や考え方を『人間愛』と言うんです」、「人間愛は思いやりや感謝に支えられています。塚原さんは、『笑顔を育む』ことで人に感謝し、人を思いやるということをしているのです」とし、黒板に「(温かい)人間愛の精神」≒「感謝や思いやり」≒「周りの人々、自分を支えている人々に笑顔を育む」と書く。

        「自分の周りの人が毎日笑顔でいることができると、周りの人そのものも幸せだし、自分も幸せです。笑顔は、単におもしろいことを言って笑わせるということだけではありません。その人が幸せだなあ、生きていてうれしいなと感じることが大切ですね。塚原さんは、それを「道化師」という手段で実現しようとしているのです。素晴らしいですね。」

 

B        自分なりの考えを温める。(15分)

        発問4「みなさんは、だれの笑顔を育みたいですか?また、笑顔を育むために、(つまり、周りの人に感謝と思いやりの心を伝えるために)どんなことをしたいですか?すごく具体的でもいいし、大雑把にこんなことに配慮して生活したいでも構いません。少し時間をとるので、プリントに書いてみましょう。書けなければ、考えるだけでも構いませんよ。」

        書く活動を行わずに、グループで自由な意見交換の時間をとってもいい。

        道徳の時間以外でも構わないので、日本クリニクラウン協会のWebページなどを紹介し、正しい理解を図ることが必要である。(帰りの会の時がよいか。)