二人の「ありがとう」に込められた意味から

感謝についての考えを深める

「小さな親切」パート2です。

 

「小さな親切」運動本部が河出書房新社から毎年出版している『涙が出るほどいい話』(副題 「あのときは、ありがとう」)を御存じですか?「身の回りで起きた、伝えたい小さな親切」をテーマに、毎年、全国から葉書で募集する「小さな親切『はがきキャンペーン』から生まれた本です。

 葉書なので、一つ一つのエピソードは短く、1,2分で読めます。一冊に100以上の「いい話」が掲載されています。

 道徳の時間の読み物資料とするには短いのですが、朝夕の学活、全校朝会などでの話にはもってこいだと思います。

 

 今日は、30分の短い「道徳の授業」を考えてみました。(もちろん、短学活、朝礼の話でもいいですね)

涙が出るほどいい話 第九集

 

【対 象】中学校

【ねらい】 二人の間に飛びかった「ありがとう」の言葉に込められた意味を話し合う中で、他の人々に対し感謝の気持ちをもつことのよさを改めて感じ取り、温かい心で生活しようとする態度を養う。2-(2)

【学習内容】

(1)二人それぞれの「ありがとう」に込めた意味

        人から親切にしてもらったことへの感謝(杖をとってもらった半身不随の女性)

        人のお役に立てたことへの感謝(杖をとってあげることができた車椅子の女性)

        親切にしてもらって「ありがとう」、親切にすることができて「ありがとう」、その瞬間が共に「有り難い」ことなのだということ……自己評価観点(本時の学習内容)

(2)自己評価観点から今までの生活を振り返ること

        自分なりの思いやりの行動(の具体)

        これからの自分の生活について考えること

 

【資料】

    「うれしい朝」

   『涙が出るほどいい話 第九集』PP.101-102 

河出書房新社 2004.7

    京都府舞鶴市在住、79歳の女性の葉書。

        40年来下半身まひの女性は、気分のよいときは、ストレス解消に、電動車椅子での散歩を楽しむ。

        道ばたの雑草、山の緑、空ゆく雲、澄んだ空気…

        その夜には、美しいものがいっぱいさる。ありがとう、ありがとうと思いながら、ゆうるりと走ってゆく。

        ある日、脳梗塞の後遺症で半身が不自由な近所の奥さんが、かがみ込むような不安定な格好で立っておられた。

        「どうなさいました?」「杖がすべってしまって…」杖は側溝に斜めに引っかかっていた。

        車椅子の女性は、車椅子をゆっくり側溝に近付けて手を伸ばし、やっとの思い出杖をとることができた。

        いつも人様にご親切を受けるばかりの女性が、初めて人のお役に立てて、とてもうれしい朝だった。

        二人の間に、「ありがとう」の言葉が飛びかった。

 

【学習過程】30分授業)

@        二人の「ありがとう」に込められた意味を話し合う。(20分)

        全文を2回ほど読み聞かせた後、発問1。

        発問1:「二人のありがとうに込められた気持ちについて考えてみましょう。まず、杖を側溝に引っかけてしまった奥さんの『ありがとう』の気持ちを他の言葉に変えてみましょう。次に杖をとってあげた車椅子の女性の『ありがとう』の気持ちを他の言葉に変えてみましょう?」。(プリントに書かせる)

        【杖を引っかけた奥さん(杖をとってもらった女性】@「杖をとってくれて、とっても助かりました。感謝しております。」「杖がなかったら、これから歩いて帰ることすらできなかったと思います。助かりました」など親切にしてもらったことへの感謝 A「車椅子に乗っておられるのに、無理をしてとっていただき本当に感謝しております」「やっとの思いでとっていただきうれしかった」)など、相手に迷惑をかけてしまったことへの感謝 などが出てくるでしょう。

        【杖を取ってあげた女性】B「人の役に立てたことがうれしかった」、「初めて人のお役に立てたことが喜びだった」、「自分が役立てるような場を与えてくれた奥さんがいてくれたことがうれしかった」などの「役立ち感」への感謝 

        【両者】C、「自分は親切にできた、相手は親切にしてもらえた」など、互助の機会が存在したことへの感謝 

        @Aはすぐに想像できるでしょう。Bは、本文に書いてあるので、@Aよりは少数でしょうが、出てくるでしょう。(出ないようなら、机間を回っているときに書いている子どもを見付けて、指名するしかないでしょう)。Cは、@ABを踏まえて、教師から離してもよいでしょう。

        親切にしてもらって「ありがとう」、親切にすることができて「ありがとう」、その瞬間が共に「有り難い」ことなのだということ、特に「親切にできてありがとう」と感じる心が素晴らしい……自己評価観点(本時の学習内容)

 

A        親切にできたことに感謝した経験について想起する。(15分)

        発問2「親切にされて『ありがとう』と感謝したことはあると思います。では、逆に親切にできて『ありがとう』と感謝したことがありますか?」「今までの生活を振り返って、また、今後の生活を見通して、今日の授業の感想をまとめてみましょう。すごく具体的でもいいし、大雑把にこんなことがあると思い出してもいい。少し時間をとるので、プリントに書いてみましょう。書けなければ、考えるだけでも構いません。」

        親切にできて「ありがとう」と言える人になれるといいですね。また、互いに「ありがとう」と言えるクラスになるといいですね、と教師からまとめて終わる。

        「ありがとう」と書いた短冊を教室の後ろに貼っておくと一層いいでしょう。