「夕日へ続く道」で「生きる」を考える

【対 象】 中学校(または小学校6年生)

【ねらい】 源ジイの「バカらしさ」に対する考えや賭けに込めた雄吾への思いを話し合うことを通して、周りの人の支えに感謝しながら、希望と勇気をもって生きようとする心情を高める。1-(2)

【学習内容】

○ やらなければならないことをやろうとする気持ちの大切さ

        身の回りにあるやらなければならないことの数々

        やらなければならないことをやろうとする気持ち

        周の人々の支えへの感謝

 

【資 料】「夕日へ続く道」の一部(PP.163-171)

(『約束』 石田衣良 角川書店 H16 所載)

 

   粗筋

「なぜ誰もが同じ制服を着ているのか。なぜ学校指定のカバンをもたなければいけないのか。なぜ四十の机が同じ方向を向いているのか・・・」などと考え、「すべてがわけもなくバカらしくなってしまう」中1の雄吾は、二学期の後半から不登校になる。理解のある両親は無理に登校しろとは言わず、読む本と昼食代を置いて共に働きに出る。公園のベンチで一日を過ごす生活が続く中、廃品回収をする源ジイのもとでアルバイトをすることになった雄吾。ある日、源ジイは、脳血栓で倒れる。苦しいリハビリを始めた時、源ジイは3日間の間に20メートル歩くことができたら、自分の言うことを聞けと言う。そして、賭けの当日、必死の様相で20メートルを歩ききった源ジイは、雄吾に毅然として言うのだった・・・・

 

【学習過程】(50分授業)

@        資料を聞き、雄吾の言う「バカらしさ」集めをする。(15分)

        発問1「雄吾の言うバカらしさを集めてみよう。」

        朝の読書などで全員が全文を読んで授業を行うことが前提である。(授業で取り上げるのは上記頁の部分 朗読10分)

        事実関係を時間に沿って板書しながら理解させ、雄吾の言う「バカらしさ」に当たるものを出し合い、(一部)共感的な思いを広げる。

        「雄吾の言う『バカらしさ』対して、源ジイはどんなことを雄吾に言いたいのだろうか?」などと投げかけながら、「源ジイの言いたいことやしたこと(賭け)に込めた思いを考えよう。」という課題を設定する。

 

A        「ちゃんと見てろ。ほんの何メートルか歩くだけで、おれはもうふらふらだ。みっともなくて、だらしないだろ。いつも兄ちゃん(雄吾のこと)がいってた『バカらしい』って、こういうやつだ。」に込められた思いについて話し合う。(15分)

        発問2「源ジイの言う『こういうやつ』とは、どんなやつのことだろうか。」

        (1)ほんの何メートルか歩くだけで、ふらふらになるやつ (2)バカらしくても、やらなきゃならないことをやっているやつ (3)どこかで無理して、まわりに調子を合わせてるやつ (4)大人 の4つくらいの意見が出る。

        (1)〜(4)のどれも本文中の言葉である。どれも正しい。「人間、どんなにバカらしくても、やらなやならねえこともあるんだ」という源ジイの言葉を板書し、理解を確かめる。

        源ジイの発言部分を再度読み合ったり、グループで話し合ったりしながら、源ジイの言う「大人」や「どこか無理をして、まわりに調子を合わせてるやつ」というのは、否定的な意味で言っているのではなく、そんな「心の広さやゆとり」「突き詰めて考えすぎない心の隙(?)」「どんなバカらしさにも込められている大切な意味」を大切にしてほしいという源ジイの気持ちを理解させる。

        賭けに勝った源ジイが雄吾に求めた「オレが兄ちゃんにやってもらいたいのは、ただ一つだ。(中略)きちんと中学にいって勉強しろ。」が最も「バカらしいけど大切なこと」だということを共通理解する。

 

B        わざわざ賭けをしてふらふらな姿を見せた源ジイの意図を話し合う。(10分)

        発問3:「みっともなくて、だらしない姿を見せる賭けをした源ジイのねらい(思い)は何だろうか。」

        (1)みっともない姿を見せることで強く訴えようとしている。 (2)雄吾の周りにも「バカらしいことをちゃんとやっている人がいること」に気付いてほしいとの願いを込めた。(3)雄吾の周りにいる「バカらしいこと」をちゃんとやっている人(例えば雄吾の父母)が雄吾の生活を支えていることに気付かせたかった。 (4)源ジイ自身も自分がそんなバカらしいことをすることができることを知りたかった。自分でも納得した生き方をしたいと願っていた。などの意見が出る。

        発問4:「あなたはどの考えに一番納得しますか?」

        正解はない。一人ひとりの「源ジイに対する思い(つまり、どんなにバカらしくてもやらなきゃならないことをやることの大切さ)」の受け止めを強くする。

 

C        教師の思いを話す。(5分)

        周りの人の支えに感謝しながら、希望と勇気をもって生きようとすることのよさを率直に話して聞かせる。

        石田衣良のその他の作品を紹介して、読むように勧めるのもいいか・・・