「しろのあお Lesson13・14」で

思いやりを学ぶ

【対  象】 小学校なら何年でも可能

       ※ この指導案は、中学年の事例

       ※ 新学期すぐ、または、クラス替えを控えた年度末が有効

 

【ね ら い】 友達を思いやり、親切にしようとする態度を養う。    2-(2)

        ※ 2-(3) 信頼友情でも指導可能

【学習内容】

(1) ひとりぼっちの友達を遊びに誘うときのドキドキ(緊張や難しさ)に気付くこと。

(2) ひとりぼっちの友達の気持ちを想像すること、想像できるよさに気付くこと。

(3)思いやりには「勇気」が必要だということに気付くこと、「勇気」を出すことのよさに気付くこと。※ (2)(3)の後者はなくてもよい。

(4) 友達への「自分らしい接し方」の具体的なめあて、イメージをもつこと。

 

【資  料】『しろのあお  小学生に学ぶ31コのこと

 上大岡トメ:作 2005.4.6 飛鳥新社

http://www1.ocn.ne.jp/~tomesan/

   
   ■ 資料(漫画)

   【Lesson13】

主人公「城野 あお」(10才、花野木小学校4年4組、少年野球部「花野木クラブ」所属。身長128p)は、2学期はじめ転入してきて友達ができない「藤崎耕介」君が、昼休み、教室でぽつんとひとりぼっちにしているところに出くわす。

「一緒にフットする?」と誘おうかどうしようか迷いながらも、結局誘うことができなかった。「今、藤崎 すごくさびしそうな顔してなかったか!? オレって もぉ!!勇気ないよな・・・」と後悔する。

次の日の放課後、いつもの遊び仲間がみな都合悪い中、偶然に藤崎君と出会う。

 

Lesson14】

「今こそ声をかけるチャンスだ!!」と勇気を出して、「藤崎 キャッチボールしないか?」と話しかける。一緒にキャッチボールをする二人。玉は速いし、左利き。「野球部入れよー」と誘う。

引っ越してきたのは、親がリコンしたからという事情も打ち明けられ、「いろんな家があるんだな とーちゃんとかーちゃんはいて当たり前だと思っていたのに」と考える城野。

翌日、藤崎君は、本当に野球部に入ってきた。「オレ〜 セカンド希望しよーかな〜」と言う藤崎君に、「マジ!?オレがレギュラーから落ちるじゃん!!」と戸惑う城野君なのだった。

 

■ 扱い方

     思いやりや友達とのつながりには「勇気」がいるということに気付かせる学習内容です。

     それについて、本書では、「やらないで後悔するよりも、勇気を出してやってみよう」「勇気を出したら、すっきりするよ」「見かけだけで判断せずに、まずは話してみよう」などと述べています。

     子どもへの提示は、一部改作。Lesson13はそのまま。Lesson14の「親がリコンしたたんよ」のコマ(87ページ最後のコマ)から「いろんな家があるんだな・・・」(88ページ最後から2番目のコマまでの5コマ分(1ページ分)は、削除。

Lesson14の最後のコマは、そのまま残し、落ちとする。

(つまり、リコンした云々の件は削除する)

 

【学習過程】(45分授業)

@        「ドキドキしている城野君の気持ち」を話し合う。(15分)

        提示1:「今日は、上大岡トメさんの書籍を用いて学習をします。「しろのあお」という書籍です。」と切り出し、主人公を概説。82ページ3コマ目、「誘ってやろうーか『一緒にフットする?』って」 とドキドキしているところまでを読み聞かせる。拡大コピーして黒板に添付。

        発問1:「城野君は、どんなことを考えていたでしょうか。城野君になったつもりで、想像してください。」

        @ 「フットが嫌い」などの理由で断られたらどうしようか思っている。A 何も言わない、など無視されるのが怖いと思っている。 B 「みんなが何かいう」のが気になっている。 C 理由はともかく、話しかけることそのものが恥ずかしい。D 「一人で」話しかけるのが気になっている、などが出る。

        Bについては、「友達は何というかな?」「友達は何と言うと城野君は思っているのかな?」などと「問い返しT」をして、深める。@ 「人数が合わなくなる」というゲームそのものの成立の問題 A 仲良くないものは、ゲームに入れたくないという「自分勝手」「心の小さな考え」(中学年には少なくない) B 話すアクセントが違うような人を友達にしたくないという「いじめ」の芽となるような考え 等を引きだす。

        そして、「そんなことを友達は実際に言ったのか?」「友達が言ってもいないのに、そう感じるのは何故か?」などと、再度「問い返しU」をして、それらの考えは「城野君がそう思っているというだけの話であることから、城野君自身の考えである」ことに気付かせる。

 

A        誘えなかった時と誘えた時の気持ちの違いを話し合う。(20分)

        提示2:結局声をかけられず、後悔し、次の日の放課後、出会ったところ(つまり、Lesson13全部)を提示する。

        発問2:「城野君の気持ちは分かりますか?」(「どんな気持ちか?」と尋ねてもいい)

        「分かりますか」と尋ねても、「どんな気持ちか?」と尋ねても、@ 「勇気のない自分が情けない」 A 「藤崎君に悪いことをした。藤崎君は、誘ってもらえると思っていたかも・・・誘って欲しいと思っていたに違いない」 B 「誘っていれば、楽しく遊べたかも」 など、後悔していることを押さえる。「分かりますか」と尋ねたなら、「あなたにも似たような経験があるの?」と振り返りをすることができるので、少しは「自分事」として捉えさせることができる。

        提示3:「城野君は、今度は誘うと思いますか?」と軽く振っておいて「多分、誘うと思う」と予想させ、Lesson14の藤野君の回想部分までを提示する。(87ページ3コマ目)

        発問3:「『キャッチボールしないか?』と勇気をもって誘った後、仲良くなった時の城野君の気持ちは分かりますか?」(「どんな気持ちですか?」と尋ねてもいい)

        @ すっきしした A 藤崎君が喜んでくれたようなので、うれしい。以前、住んでいたところの話もたくさんしてくれた。 B 仲良くなれたのでよかった C 自分より野球が得意そうなことや、藤崎君が以前住んでいたところのこと等が分かったのがうれしい などを引き出す。

        発問4:発問2と3の回答を対比的に板書し、その違いが際だつようにしておいた後、「気持ちの違いに目を向けましょう。城野君のよさはどんなところですか?」

        @「藤崎君の立場に立って、誘えなかったことを後悔したり、誘えてよかったと思えたりしたことが素晴らしい。(上記下線部分) A 悩んだり後悔したりした結果、誘うことができた城野くんは、「自分がすっきりして、成長でき」ている、それが素晴らしい、等に気付かせる。

        出なければ、教師から説明することも必要。「藤崎君の立場に立って、行動しなければ、単なるお節介や自己満足でしかないが、城野君は、十分相手の立場に立っている。だから、藤崎君は初めてなのに、いろいろ話してくれているのだ。」「思いやりには『勇気』が必要。思いやりと勇気は表裏一体である。兄弟みたいなもの」などを話す。(次の活動で話してもよい)

 

B        自分なりの友達とのつきあい方、接し方についてプリントに書く。(10分)

        発問4:「どんなところが印象に残りましたか?城野君から学べそうなことはどんなことですか?授業の感想と思って書いてください。」

        本書にある「やらないで後悔するよりも、勇気を出してやってみよう」「勇気を出したら、すっきりするよ」「見かけだけで判断せずに、まずは話してみよう」を短冊に書いておき、黒板添付。短冊はそのまま教室掲示。