『あの坂をのぼれば』で、「努力」を考える

【対 象】 中学生(学期・学年のはじめ、または終わりが効果的)

 

【ねらい】 目標を目指し、希望と勇気をもって着実にやり抜こうとする態度を培う。1-(3)

【内 容】

(1)少年が「かならず海に行きついてみせる」という気持ちになった理由について考えること。

   ・ 少年が海を見ること(目標)を強く願っていること。

   ・ 海鳥や一片の羽根をみつけたこと(目標に近付いている手応えを感じ取っていること)。

(2) 自分の目標に近付いているという具体的な事実、手応え、実感について考えること。

        具体的な事実等があるかどうか自分を見つめること。

        具体的な事実等を得るための努力等を得るために必要なことを考えること。

 

【資 料】『あの坂をのぼれば』杉みき子:作
                 (「小さな町の風景」所収)

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   ※ 粗 筋

「あの坂をのぼれば海が見える」と祖母からいつも聞かされていた少年は、ある日、山にのぼる。いくつもの坂を越え、最後には、はうようにしてのぼってきた坂の頂から見えたのは、やはりはてしなく続くのぼりくだりの坂であった。

「もうやめよう」うめくようにつぶやく少年の頭上に「つばさの長い、まっ白い大きな鳥」が一羽。海鳥である。雪のようにひらひらの羽毛も落ちてくる。「ただ一片の羽根だけれど、それはたちまち少年の心に、白い大きなつばさとなって羽ばたいた」。

少年は心に誓う。「かならず海に行きつくことができる、行きついてみせる」。(ゆっくりでも5分で読み終わる短編)

 

【学習過程】(45分授業)

@        資料を読み、少年が「かならず行きついてみせる」と強く思った理由について話し合う。(20分)

        導入から、資料提示。

        発問1:「少年が『かならず海に行きついてみせる』と強く思えた理由はなんだろうか。話し合ってみよう」

        @海が見たいという気持ちがそもそも強かった、など、対象や目標に対する強い思いがあったとする意見、A海鳥を見付けたので、海が近いことが分かり一層やる気が出た、とする対象や目標が近付いたことによる気持ちの高揚に関する意見、Bその他、に分けながら板書。

        同じ意見の者同士が、互いの気持ちの近さを感じ取れるように、「○○さんは、□□君と同じ意見だね。席は遠いのに気持ちは近い」などと、互いの親和性、関係性、受容的態度を高める。

        目標に対して、自分が今、どれくらいの位置にいるのかが分かると、やる気が出てくる。特に、目標に近付いていること、もうすぐ達成できそうだという感触(手応え、実感等)があると、一層やる気が出てくるものである、とまとめる。

 

A        自分の目標を想起し、自分の目標に対する達成感(達成度を含む)をプリントに書く。(20分)

        発問2:「学習、運動、家庭生活の3つの分野で、自分の目標を明確にし、それに対する達成感(手応え、実感、具体的な事実を踏まえた達成度も含めて)を直感的でも構わないので、プリントに書いてみましょう。」

        「いつ、何を、どの程度」など、数値を含めて目標や達成度を記述することもよいが、道徳の時間なので、特に「日頃何となく意識している自分の心の有り様(例えば、学習なら、「1日2時間学習する」という目標の方を取り上げるのではなくて、学習するときには、集中して取り組むなどの心情にかかわる目標)」を取り上げるように促す。抽象的になるので、記述しづらいことから、例示などをするとよい。

        また、手応えを感じることができるような具体的な行動や心の持ち方を考えて積極的に取組む方法などが見つかれば、プリントに付け加えるよう助言する。

        一人ひとりの机を回っていきながら、具体的にほめて回る。ゆっくりと。

 

B        教師の思いを語る。(5分)

        一人ひとりのプリントを見て感じたこと、また、教師が日頃、気をつけて生活している「努力の秘訣」のようなものを語って聞かせる。

        先人や偉人の言葉や生き方を紹介するのもよい。