「二わのことり」で友達関係(いじめ)を考える

【対 象】 小学校6・6年生(中学校でも指導可)

 

【ねらい】 みそさざいの気持ちを多様に想像することを通して、友達の立場で考えるよさ(方法・観点)、いじめ解消の方法とよさに気付き、いじめを解消しようとする態度を養う。2-(2)

【学習内容】

(1)みそさざいが考えたことを様々に考えること。

        やまがらの立場から考えること。

        うぐいすの立場から考えること。

        自分の納得できる考えを選ぼうとすること。

(2)いじめに気付くこと。

        みそさざいの行動がいじめを防止する行動であることを理解すること。

        つまり、みそさざい以外の森の小鳥の行動は、消極的ないじめであることを理解すること。

        (今後の心のめあて・自分なりに頑張ってみたいこと)

 

【資 料】『二わのことり』 東京書籍 どうとく1年副読本

        1年生の教材を小学校高学年(又は中学校)で用いる。

        この教材を「いじめ」防止の授業に用いることが妥当かどうか意見が分かれるかも知れない。

 

【学習過程】(45分授業)

@        資料を読み、感想を出し合い、学習課題を知る。(10分)

        発問1:「感じたことを自由に発表してください。」

        @「みそさざいさんは、やさしい」などみそさざいの行動に関する感想 A「みそさざいさん以外の森の小鳥たちは、もう少しやまがらさんのことを考えた方がいい。音楽会の練習も大切だけど、誕生日は1年に1回しかない」「うぐいすの家の方が明るいからいいと思ったのだろう」など、森の小鳥たちを非難する意見 B「うぐいすはどうしてやまがらの誕生日をお祝いしないのだろう」などういすに関する意見、C「やまがらさんは、みそさざいさんが来るまではとても寂しかっただろう、でも、みそさざいが来て、とってもうれしかったに違いない」などやまがらさんの気持ちに共感した遺感想、などが出る。

        これらの発言を傾聴して、@の発言をもとに、学習課題「みそさざいさんの行動のよさに学ぼう」を提示し、板書する。

 

A        みそさざいの気持ちを話し合う。(15分)

        発問:「うぐいすの家でみそさざいさんが考えたことをいろいろ想像して発表してください。」

        この授業は、「自分がみそさざいだったら、どんなことを考えるか」ではなく、「みそさざいさんは、どんなことを考えたか、いろいろ想像する」ことに重点を置く授業である。

        @「うぐいすさんの家に来てみて、はじめて(または、改めて)やまがらさんのさびしさを感じた。」「うぐいすさんの家が楽しかったので、その分、やまがらさんの家の寂しさが感じられた」(心情理解) A「うぐいすさんの家に『みんな』が来ていたので、やまがらさんの家に誰も行っていないことに改めて気が付いた」(状況理解) B「自分だけでもやまがらさんの家に行けば、やまがらさんは喜んでくれるのではないかと考えた。(解決方法)C「友達の小鳥さんも誘っていくといいのかも知れないけど、無理に誘うのは、その小鳥にも、やまがらさんにも、そして、うぐいすさんにも悪いのではないか。」(解決方法の深化) D「今からやまがらさんの家に行くのは、うぐいすさんにとってはいやなことかも知れない。だれも誘わずそっと抜け出すしかないかな?」(解決方法の深化) E「自分が抜け出しても音楽会の練習は可能かな?他の小鳥を誘うと、音楽会の練習そのものがうまくいかなくなるかも知れない、だから一人でそっと抜け出すしかないかな?」 F「みんなは、梅の木のある明るいきれいな家だからうぐいすさんの家に行ったのか、それとも、自分がいないと音楽会の練習にならないと考えて、言ったのか、そもそも自分はどういう理由から行ったのだったっけ?自分が来た理由もはっきりしない」(などということを考えるか・・・)

 

B        「最も納得できる考えを話し合う。(15分)

        発問3:「自分ならどの考え(どの考えとどの考え)に最も納得するか、話し合ってみよう。

        どれもそれぞれにある程度「分かる」発言であるが、ここでは、それを敢えて、再度「最も納得できるのはどれか」と問いかけ、考えを深める。その際、「自分なら」として、あくまでも自分の考えとして自分の体験等に引きつけての話し合いをする。Aの学習活動の時とさして考えは変わらないかも知れないが、再度話し合うことに意味がある。

        全体で一つに決めるとか、二つに決めるとかがねらいではないので、いろいろな考えが、「自分としては最も納得できる」として発表されて構わない。もちろん、板書も様々である。

        結論として、みそさざいの「優しく温かい思いやりの心」に気付かせるとともに、いや、むしろ「冷静な状況分析や解決策の構想」がその「温かさや優しさ」を支えていることを話して聞かせる。

        発問4:「Fの他の小鳥たちのうぐいす宅訪問の理由はどっちだと考えるか。」(「小鳥たちの行動が、いじめだということが理解できるか?」と直接発問してもよい。)

        この読み物資料からだけでは分からないところはあるが、「やまがらのいえは、とおくさびしいところにあります。みんなは、やまがらのいえにはいこうとしません」や「うめのきのある、あかるいきれいなうぐいすさんのいえにいこう」などの記述から、一般的に考えると、「音楽会の練習があること」は言い訳の一つで、「やまがらの誕生日を積極的にはお祝いしたくない」という気持ちがあると考えるのが自然である。この点から、普段から森の小鳥たちは、やまがらを疎ましく感じていることが想像される。

        いじめには、「無視したり、ものを隠したり、殴ったりする直接的ないじめ」もあるが、「その人からの誘いに乗らない、また、それらしい理由をもとに、その人から遠ざかる消極的ないじめ」があることに関連付け、森の小鳥たちの行動が「いじめ」そのものであることに気付かせる。

        みそさざいがした行動は、はじめは、いじめの片棒を担ぐものであったら、途中からは、そのいじめの中から出た勇気のある行動であったことを知らせる。それは、「やまがらのうれしそうな気持ち」を参照しながら、感じ取らせる。

        「そっと抜け出して」という方法が、いじめ解消にとって最善かどうかは別として、この場合には、やまがらの心を救ったことは確かである。今後の課題として残す。

 

C        授業の感想を書く。(5分)

        書く活動を強制するかどうかは難しいところである。書かない方がいいかも。というか、書けないかも。