『にじの見える橋』で、「生きる」を考える

【対 象】 中学生(学年はじめ、学期はじめが効果的)

 

【ねらい】 自己を見つめ、自分らしい生き方を求めて行動を起こすよさについて考えることができる。1-(5)

【内 容】

(1) 考え事に心奪われていた少年の気持ちに共感する。

   ・ 少年と同じように自分にもある「うまくいっていないこと」を考えること。

(2) 「今の自分にとっての『にじの見える橋へ上ること』とは何か」を考えていこうとする気持ちになる。

        にじ(出会いの対象)とにじを見るための橋へ上ること(行為)の(意味の)違いに気付くこと。

        橋に上ること(行動を起こすこと)のよさに気付くこと

 

【資 料】『にじの見える橋(1)』杉みき子:作
                 (「小さな町の風景」所収)

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   ※ 概 要

     雨がやんだことに気付かず小走りに急ぐ少年は、「このところ、なにもかも、うまくいっていない」と感じていた。その時、にじを見付ける。全体を見たいと思い、歩道橋へ駆け上がる。

大きく息を吸い、「自分のことを恵まれたもの」に感じることができた少年は、たまたま通りかかった仲たがいした友達を歩道橋の上に誘う。

 

【学習過程】(45分授業)

@        少年と同じような「うまくいっていないこと」を思い起こす。(10分)

        発問1:「だれにも、少年のように『うまくいっていないこと』があるものです。みなさんには、ありますか?もしあれば、心の中に思い浮かべてください。」

        プリントに書いたり、発表し合ったりすることには行わない。

        だれにも「何となくもやもやすることがあること」、「もやもやすることがあることは、悪いことではないこと」を共通理解する。

 

A        少年のもやもやが晴れたのはどうしてかについて話し合う。(25分)

        発問2:「少年のもやもやが晴れ、『自分のことを恵まれたもの』に感じることができたのはどうしてだと思いますか?」

        @にじを見付けたから、にじを見たから、など「にじ」との出会いを理由とする意見、Aにじの美しさ、大きさなどに感動したなど、にじのよさを感じたことを理由とする意見、Bにじを含めて、自然の偉大さ不思議さを感じたことを理由とする意見、C自然の偉大さと自分のもやもやの違い(つまり、自分の悩みがとってもちっぽけなものだったということ)に気付いたことを理由とする意見、などが出る。それぞれを受容的に受け止めるとともに、同じ意見ごとにまとめながら板書する。また、同じ意見をもつ生徒が互いに誰なのか意識(理解)できるようにする。(これがとっても重要)

        発問3:「みなさんの意見はとてもよくわかりました。これら4つほどの理由は確かに『少年のもやもやを晴らし、自分のことを恵まれたものに感じ取らせた理由』には違いありません。しかし、これだけではありません。少年の心の中に考えるのではなく、少年を外から見て、理由を考えてみてください。『どうしてもやもやが晴れ、自分を恵まれたもの』と感じることができたのでしょうか。」

        これで、教室がしーんとしてしまったら、「少年の感情の変化は、少年が何をした後に起こったのです。何をしたから、感情の変化が起こったのでしょうか?」と問う。

        少年がしたことがランダムに発表されるでしょう。例えば、D「大きく息を吸ったから」、E「立ち止まったから」、F「小さい子どもたちの声に耳を傾けたから」など・・・

        授業者の考えは(つまり、この授業案の主張点は)「自分から、にじの見える橋に上ったから」である。つまり、「自分の興味を惹いたもの、したいと思ったことを実現するために、すぐに、ちょっとした行動をしたこと」が、少年のもやもやした気持ちを晴らし、「自分のことを恵まれたもの」に感じさせたと考えるのである。地面と橋の上の距離はほんの3,4メートル。その3,4メートルを上ったことこそが、結果、きれいなにじの全てを見ること、空を見上げること、立ち止まること、下を見下ろすことに繋がり、自分を見つめることに繋がった。

        大切なのは、「にじ」の存在そのもの(または、にじとの出会い)ではなく、にじを見るために起こしたほんのちょっとした「行動」なのである。

        光村図書国語中学校1年(P20-25所収)によれば「少年にとっての『にじ』のように、自分の気持ちが何かと出会うことで変わった経験を思い出し、話し合ってみよう」とある。それを「少年にとっての『にじをみるために起こした歩道橋に上るという行為』のように、自分の気持ちが何か行動を起こすことで変わった経験を思い出し、話し合ってみよう(または、変わった経験をこれから意図的にやってみてはどうか話し合おう)」としてはどうだろうか・・・

        ということで、第3の活動は、以下・・・

 

A        自分の生活や考え方をほんの少しよいものに変えるために、具体的に行動を起こしてみたい内容をプリントに書く。(10分)

        発問3:「導入で思い起こした、自分の中のもやもやをすっきりさせるために、自分ができる『ほんの少しの行動』を考えてプリントの書いてみよう」

        何に出会うかではなく、出会うために何をするのか、ということが大切であることを、教師の経験をもとに聞かせることが具体的で、効果があるのでは・・・