「きんのおの」で正直に生きることを学ぶ

【対 象】 小学校2年生

【ねらい】 正直な木こりの気持ちや神様の行動を話し合うことを通して、正直であることの清々しさ、不正直であることの醜さに気付き、正直に生きようとする態度を高める。1-(4)

【学習内容】

(1)正直なきこりの気持ちや神様の行動を話し合うこと

        正直であることの清々しさ、よさ

        不正直であることの醜さ、情けなさ

(2)今までの自分を振り返ること

        正直であったこと、不正直であったことそれぞれの事実

        自分の弱さと、よりよく生きたいという願い

 

【資 料】「きんのおの」(『みんなたのしく どうとく2』

 東京書籍 平成16年度版 所載)

   粗筋

     正直なきこりが池に鉄の斧を落とした。神様が金の斧をもって現れたが、「それはわたしのではない」と言う。次に銀の斧をもって現れたが「違います。わたしのは鉄の斧です」。神様は、鉄の斧を取ってきて、金の斧・銀の斧と併せて渡した。

     その話を聞いた不正直なきこりがわざと池に鉄の斧を投げた。神様が金の斧をもって出てきたらすかさず「それは、わたしのです」。神様は、だまって池の中に消え、不正直なきこりは、自分の鉄の斧までなくしてしまった。

 

【学習過程】(45分授業)

@        正直なきこりが「わたしの斧ではない」と言ったときの気持ちを話し合う。(15分)

        発問1:「わたしの斧でない」と言ったきこりは、嘘をついて「わたしの斧です」と少しは言いたくならなかっただろうか?」

        (1)全く嘘をつこうなどとは思わない派 (2)少しは、嘘をついて金や銀の斧をもらおうと思った派に分けて、理由を言い合う活動を仕組む。

        国語ではないので、文章を根拠に意見を言うことを勧めないが「銀の斧をみせられても『ちがいます。わたしの斧は鉄の斧です』ときっぱり言っていること」からすると、このきこりに嘘をつこうなどと言う迷いは全く無かったようだ。

        しかし、そこは、子ども。自分の気持ちを投影させて、「少しは思うかも・・・だって、お金持ちになれる」とか「せっかく神様がくれると言ってくれている」、「銀の方なら少しは許してもらえるかも・・・」などと考えるというもの。揺さぶるなら、「もし、あなたならどうか」や「先生だったら、銀の時はさすがに、もらっちゃおうかなと思うかも」などと問い返すことも可か。

        いずれにしても、「正直者のきこりには、嘘をつこうなどと言う気持ちは全く、かけらも無かった」ことを押さえ、はじめから「金の斧をもらってやろうとたくらんでわざと鉄の斧を池に投げ込んだ不正直もののきこり」とは大違いであることを確認するとともに、正直者きこりの清々しさ、よさと不正直者のきこりの醜さ、情けなさを対比して感じ取らせる。

 

A        神様の行動について話し合う。(15分)

        発問2:「神様が、正直者のきこりに金・銀・鉄の斧を渡したのに対して、不正直者のきこりには、鉄の斧さえ取ってあげなかったことに対して思うことを発表してください。」

        発問2(代替え):「このお話で思ったこと・感じたことを発表してください」

        寓話なので、論理的に読む必要はなく、自由な感想を発表する活動を仕組む。

        最終的には、(1)正直に生きようとするものは、必ず得をすること (2)不正直に生きようとするものは、必ず損をすること (3)それは、神様が必ず見ていることの3点を押さえる。

        (1)について:「必ず得をする」とは、金銀の斧をもらえる、つまり、お金持ちになるというような得ではなく(そのような得が全くないとは言えないけれども)、正直に生きると神様のように「周りの人」がその人に対して優しく接したり、信頼してくれたりするという「得」であること

        (2)について:「必ず損をする」とは、鉄の斧をなくす程度の小さなものではなく、周りの人の信頼や期待を裏切り、友達や仕事を失うなどの「とても大きな損」であること

        (3)について:神様とは(確かに神様も含まれるが)周りの人、家族、職場の人などのことであり、何よりも「嘘をついた自分」は「自分が必ず覚えている」ということ、の3点を毅然と教師の方から子どもたちの方へ伝える。(ここが曖昧ではダメで、きちんと「教える」ことが必要だと思う。)

 

B        授業の感想を書く。(10分)

        発問3「今まで、不正直であったこと、嘘をついたことを静かに思い出してください。(紙に書いたり、友達に話したり、ましてや発表させたりはしない)」

        説話「人間は、時に不正直になってしまうこと、嘘をついてしまうことがある、弱いもの。しかし逆に、正直者の木こりに負けないほど、正直に生きることができるものでもある。正直はすがすがしく気持ちいい生き方、人の信頼も得られる幸せな生き方であるのに対して、不正直は、醜く、情けない生き方。自分も正直に生きていきたいと思っている。その意味では、みなさんと同じである」(結局、誠実な生き方はその他の道徳的価値と同じく、児童生徒の課題であり、そのまま大人、教師の課題でもあるわけで、情けない自分に気付くのであります・・・)