「ドッジボール」で男女の協力について話し合う

【対  象】 小学5・6年生

 

【ね ら い】 互いに信頼し、学び合って友情を深め、男女仲よく協力し助け合おうとする心情を高める。2-(3)

【学習内容】

(1) アメリカの報道(一部の学校区でドッジボール禁止)について自分なりの考えをもつこと。

(2) ドッジボール紳士道に対する自分なりの考えをもつこと。

 

【資  料】『ドッジボール紳士道』 上前淳一郎:作
      (「読むクスリ37」H16.3.10 文春文庫 所収)

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   ※ 粗 筋

     「アメリカの一部学校区でドッジボール禁止」と報じる新聞記事ついて概説。「『人間を標的にするのが好ましくない』『攻撃的な子どもが増える』などの指摘が父母や教育学者から相次ぎ」(2001年6月21日付朝日新聞夕刊。ニューヨーク=山中季広記者)始めたからからだという。

     これに対して、『電通』P&D局デジタル・ライフスタイル研究部主務の北風祐子さんが、自分の小学生の時のドッジボールにまつわる話を紹介。

相手チームの男の子がボールをもったとき、「もう駄目、やられた」と観念して目をつぶる。ところが、私にボールが飛んでこない。「あれ、と目をあけてみると、その男の子は、こちらのチームの強い男の子めがけて、力一杯投げつけてくる。」

味方がつぎつぎアウトになって、残ったのは逃げ回っていた北風さんのような女の子だけ、という状況になったときは、いやでもぶつけられる。「でもね、そういうときには、痛くない足をめがけて、そっとなげてくれるんです。」

「遊びを通じて、子どもたちはそういうことを学んでいくんです」(中略)「私の娘は二歳ですけど、この子が小学校に入ったとき、ドッジボールがないと困る。弱くてもいいからやらせたい、思うんですよ。」

   

【学習過程】(45分授業)

@        新聞報道について話し合う。(20分)

        提示1:「銃やナイフによる学校での殺傷事件が絶えない中で、アメリカの教育界がぴりぴりしてきている様子が、手に取るように伝わってくる。反面、子どもたちの方は『大げさ』と反発している、とも記事は伝えている。さて、どっちだろう」までを読み聞かせる。(注釈を入れながら5分)

        発問1:「みなさんは、このことについてどう思いますか?」

        禁止の根拠となっている考え(「運動神経の鈍い子どもがまっ先に狙われ、いじめや仕返しを誘発しやすい」コネティカット州の大学のニール・ウィリアムス教授)に賛成か否か、そしてその理由は何か、という話し合いを行う。

        自分がどちらの立場を取るか、黒板にネームプレートを貼って示したり、少人数グループで話し合ったりする。理由を類別しながら板書。

        理由を問い返すときに、「自分たちの場合はどう?」と学校生活について話し合うことができるよう時間を取ることもできる。

 

A        「でもね、そういうときは(   )です。」の(   )を話し合う。(20分)

        提示2:「でもね、そういうときには、(痛くない足をめがけて、そっと投げてくれるん)です。」までを読む。

        発問2:「見方がつぎつぎアウトになって、残ったのは逃げ回っていた北風さんのような女の子だけ、という状況になったときには、いやでもぶつけられる。でもね、そんなときには」どうなのでしょうか。(   )に入る北風さんの言葉を考えてみましょう。

         すぐに「ゆっくりぶつける」「痛くないようにぶつける」「足などをねらう」などの意見がでる。

         「どうしてそうするのですか」と問い返す。@「勝てばいいのだから、当て方はいろいろあっていい」など、勝負にこだわる意見、A「怪我をしたらいけないから」など、体のことを心配する意見、B「泣いたり傷ついたりしたらいけないから」など、心を心配する意見、C「男の子は、女の子に優しくしなければならない」など、一般的な価値について話す意見。D「相手の能力に合わせて投げると楽しい」など、運動の工夫について話す意見等が出るでしょう。教師の考え方によって、軽重を付けて取り上げることが必要です。

        いずれにしても、「北風さんはどんなことがうれしかったのか」と、北風さんの気持ちになって考えてみることが大切でしょう。

        発問3:「自分たちの生活で、男子が女子のことを考えて行動することはありますか。」

        給食の食缶など重いものを男の子がもつなどの意見が出るでしょう。思ったほどないのかもしれません。

 

B        北風さんの思いと教師の思いを語る。(10分)

        提示:最後まで読み聞かせる。

        「男には男の道やポリシーがあり、そのポリシーのしっかりした男ほど女に優しい」とする北風さんの思いを知らせる。

        教師がこれをどう子ども伝えるかは、教師の考えによる。よく考えを整理して、子どもの実態に応じて話をして聞かせたいものです。