「わき出した水」で道徳の授業 1 道徳学習は、自己評価観点を学ぶ学習である。 道徳学習は、自己を見つめる学習です。 「どんな自己」を「どんな観点」から「どのように」見つめるのかを学ぶ学習です。 2 「どんな自己」を見つめるか? その授業で扱う内容項目にかかわる行為、あるいは、心の有り様を見つめます。 低学年1−(2)勤勉努力を例にとって考えてみましょう。 今までの生活の中で「途中であきらめないで努力したこと、またその時の気持ち」ないしは、「途中であきらめてしまったこと、また、そのときの気持ち」を見つめます。
3 「どんな観点」から見つめるのか? (1)資料 1年生1−(2)勤勉・努力で書かれた「わき出した水」というお話で考えてみましょう。 お話の内容は次のようです。
取り上げる場面は、掘るのをあきらめかける場面です。心が揺れている場面の主人公の気持ちを尋ねるのが原則です。
ここで、まとめます。
この「自分が大切にしたい人や物のために最後まで努力することは、とても大切なことである。」が自己評価観点となります。これをプラスワンって呼んでいます。 4 「どのように」見つめるのか? (1)授業の導入で見つめた自分の努力を再度見つめる。 授業の導入で自分のプリントや黒板に書かれた「努力の姿」に戻って、その努力の行為や心情の中で
と、問います。お手伝いでもお金がもらえるからそれめあてに努力している子供と、家族の一員として自分もできることとやってるという子供とでは、後者の方が道徳的価値が高いわけです。それをカニから学んだということになります。 (2)できた経験に気付かせる。 「努力できなかったことはありますか?」と、マイナスの経験を問いかけるより、少しでも人のために努力した経験に着目させ、それを引き出し価値付けることが有効だと思います。
どんな小さなことでも「自分の中のカニ」を見つけさせることが大切です。みなさんも、このカニさんと同じように、『大切な友達や人、物のために』最後までがんばったこと」があると思います。それはどんなことだったでしょうか。そのとき気持ちを書いてみましょう。」などと発問することが有効です。 今まで、単に「最後まで頑張ることがとっても大切」と思っていたところに、「人のために」頑張ることも、同様に価値あることと捉えることができるようにするわけです。 というか、努力している動機や理由に目を向けることで努力する気持ちが強くなるということを学んでいるわけです。 5 つまり、当該価値を別の価値や条件・状況と結びつけて捉えること お気付きのように、「勤勉努力」が必ずしも「自分が大切に思う人や物」のためだけに行われるわけではありません。「自分自身」のためであったり、人との「約束」のため、自分の「役割や責任」を果たすためなど様々です。 今回の資料の場合は、(自己評価観点が)「人のため」であっただけの話で、別の資料では努力する理由が、「自分の役割責任を果たす」ための場合も考えられます。 つまり、自己評価観点とは、当該学習の内容項目を、他の内容項目や条件、原則などと結びつけて考えるということです。 考えてみてください。自分が何か道徳的な行為をする場合は、その道徳原則(「○○することは大切である」という認識)だけから行為が促され強化されるようなことは多くありません。必ずその道徳原則を他の道徳原則や条件、状況と結びつけ、それとの関連で行為しようとするものです。それを道徳学習で学ばせようというのです。 この資料は、「信頼友情」や「思いやり親切」を主たる内容項目にして授業し、話し合いの中で、「付帯条件(プラスワン)」を「勤勉・努力」とすることもできるわけです。どっちを主にして、どっちを従にするかは、授業者の考えによります。 |