絵本『わがままむし』で「節制」の授業

 低学年では、基本的な生活習慣の定着が大切です。とりわけ「わがままをしない」ことを身に付けさせることは難しいものです。

 この絵本は、自分のわがままが、(1)自分にとって損であること、(2)周りの人に迷惑をかけていることの2点から描かれています。後者を強調していることが、例えば読み物資料『かぼちゃのつる』などとは違うところです。

1学期に『かぼちゃのつる』で(1)を、そして2学期にこの資料で(2)を指導するとよいのではないかと思います。

 

【対 象】 小学1・2年生

 

【ねらい】 王様や家来の言動について話し合うことを通して、わがままの良くない点について理解すると共に、周りの人の「やさしさ」を感じ取り、よりよい自分になろうとする意欲を育てる。

    (1)わがままが自分にとって損であること、(2)回りの人に迷惑であることが理解できる。(表情・挙手)

    (家来等)周りの人の気持ちに共感できる。(ワークシート)

    自分のわがままを少なくしていこうとする意欲をもつことができる。(ワークシート)

 

【資 料】 『とんでけ とんでけ わがままむし』 1987.7

さくらともこ・作  若菜 珪・絵 金の星社 

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=4621

 

【学習過程】(45分授業)

 @ 「自分がわがままだなあと思うのはどんなこと?どんな時?」(10分)

1.       あまり深刻にならずに、ユーモアも交えながら発表させます。

2.       終末で再度使うため、類別などせず、発表順に板書していきます。

3.       たとえば、(1)の自分自身の基本的生活習慣に関係する「歯磨きをやらない」「遅くまで起きている」「好き嫌いをする」「言われても整理整頓をしない」「無駄遣いをする」「勉強をさぼる」、また、(2)の人の迷惑に関する「決められた手伝いをさぼる」「チャンネル争いをする」「おやつの取り合いをする」「おもちゃをねだる」「遊びに連れて行ってほしいとだだを捏ねる」など、たくさん出てくるでしょう。

 

A 「わがまましないようになるために、いいお話を聞かせます。王様が出てきます。王様や家来になったつもりで聞いてくださいね。」(10分

1.       「かり」と「おどり」と「サッカー」までをゆっくり語り聞かせます。

2.      「かりにでかけたおうさまは・・・」で切り、次を想像させ、自由に発表させます。その後、「トホホホホ・・・・。こんなことになるなんて!」と(1)自分と(2)周りの者が怪我をしそうになったことを、まずは軽く理解させます。

3.       同様に、「おどり」「サッカー」を読み聞かせ、想像させ、結果を知らせ、自分の損を押さえます。

4.       サッカーについては、(1)の「自分の損」については、書かれていないので、みんなで想像してたとえば「風邪をひく」「怪我をする」などを出し合います。

5.      Aの活動では、主に(1)の「自分自身が損をする」を理解させます。

 

B 「今度は『かけっこ』だよ。『わしがやるといったら、やるのだ。はやくしたくをして、あつまれ!』という命令を聞いたとき、家来たちはどんな気持ちだっただろうか?その時家来たちが考えたこと、感じたことをプリントに書いて話し合おう。」(15分)

1.       「仕事が進まない」「かけっこなんてちっともおもしろくない」「王様に勝ったら罰せられるかも・・・」「参加しなくても牢屋に入れられるかも・・・」「王様のわがままにも困ったものだ」「王様のわがままを何とかやめさせることはできないかなあ」「これでは、我々家来の身が持たないよ」などが出るでしょう。

2.       (1)「王様自身が損をする」のグループと、(2)「周りの者が損をする」グループに分けて板書し、意見のほとんどが、「周りの者が迷惑をかけられ、困る」だということに気付かせます。

3.       板書も、二つのグループを対比的に配置し、理解しやすくします。Aでの板書とも関連づけられると一層いい。

 

C 「王様が涙をこぼしたのはどんな理由からでしょうか?10分)

1.       家来たちの「とんちの効いた行動」で子どもたちの笑いを誘います。そして、それらの行動の中に王様を思う「やさしい気持ち」があることに気づいたので王様が涙を流したことに気づかせます。

2.       涙は「周りの人の自分を思う気持ちが理解できたから」です。

3.       理由を話し合うことを通して、「周りの人の迷惑になるわがまま」は「周りの人の意見や注意(やさしさへの気付き)を素直に聞くことによって自分から正すことができる」ことに気付かせます。

 

D 「導入で発表されたみなさんのわがままは、(1)と(2)のどっちでしょうか?」(5分)

1.       (1)もあるが、(2)も少なくないことに気付かせ、わがままは自分だけの問題ではないことの理解を深めます。

2.       そして(2)のわがままをまだ自分がしているのは、注意してくれる周りの人の「やさしさ」を自分が理解できていないからだということを強調します。

 

E 「自分のわがままな行動を振り返って、感想を書く。」5分)

1.       Dに連続して、自分のわがままな行動について、今の自分が感じていることを書かせます。

2.       同時に、これからどんな自分になりたいかにも触れさせます。(あまり強調すると、単に書くだけになってしまうので、軽く促す程度にしましょう。)

3.       『心のノート』の関連ページを活用するのもいいですね。