絵本『つるのおんがえし』で誠実の授業

この話が、我々の心を打つのはなぜでしょうか。むすめの気持ち、じいさまと

ばあさまの気持ちを想像することをとおして、誠実・真心のもつ意味を考えてみるこ

とにしました。取り上げた話は、

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4033030506.html

 

【対 象】 小学5・6年生(高学年)

【ねらい】 むすめとじいさま、ばあさまの気持ちについて話し合うことを通

して、真心をもって接することの意味について考えることができ

るようにする。

【資 料】 『つるのおんがえし』

作:松谷みよ子 絵:いわさきちひろ 1966年10月、偕成社

2000年1月 69刷)

【学習過程】(45分授業)

 @ 絵本を読み聞かせる。                   (10分)

    話し合わせたい場面の絵や文章(短冊に書いて)を添付しながら、

語り聞かせる。

 

A「むすめが『はたをおっているところは、けっしてみないでください。』と

くりかえして言ったのはどんな気持ちからだろうか?」   (10分)

    次の活動で、じいさまとばあさまの気持ちを想像するので、その

活動と対比できるように板書する。

    はたを織ることに対しては「助けてもらった恩返しをしたい」「じ

いさま、ばあさまに豊かな生活をしてほしい。」「むすめとして家の

ためになりたい。」「じいさま、ばあさまのために自分ができること

をしたい。」などの意見が出ます。

    見てはならないということに対しては、「見られたら機織りに集中

できない」「見られたら自分が鶴だとばれてしまうので、はずかし

い」「自分が鶴だと分かってしまったら、鶴の世界に戻らなくては

ならないという約束で、人間の世界に来ているので、見られては困

る」などの意見が出ます。

    前者については、程なく合意されるでしょうが、後者については、

話し合いを続けても、「なぜ、見られたらだめなのか」については、

分からないままです。

B    「じいさまとばあさまが、機織りの部屋を覗いたのはどんなきもちからだ

ろうか?」                       (15分)

    「大好きなむすめだから、どんな様子でを機織りをしているのか、

見てみたい。」「近所の人の言葉についついつられてしまった。」「あ

まりにも高く売れた反物だったから、織り方を見てみたい」などの

意見が出されるでしょう。

    前の活動で想像したむすめの気持ちと対比して、娘は、じいさま、

ばあさまのために「純粋」な気持ちで機織りをしていたのに対して、

覗いてしまったばあさまは、「興味本位」に近いものだった。

もちろん、むすめのことを大切にしている気持ちがそうさせたの

かも知れないのだけど、むすめとの約束を破ってしまったことに

は違いない。

    相手に接するときには、たとえ、家族であっても、互いの気持ち

を推し量り、誠実に真心をもって接することが大切である、という

ことでまとめる。決して悪気はなくても、結果として相手の気持ち

を踏みにじることになる場合があることに気付かせる。

C    「相手は軽い気持ちでやったことなのだろうけど、自分はかなり傷ついて

しまったことはありませんか?また、その逆で、自分は軽い気持ちで言

ったりやったりしたことなのに、相手が腹を立てたり、けんかになって

しまったことはありませんか?」                 (10分)

    時間があれば、一人一人の体験をプリントに書かせたり、発表させて

もいい。無理をして発表させたり書かせたりする内容ではないので、

問いかけて、静かな時間を2,3分確保するだけでもいい。

    「子どものいないじいさまとばあさま」のところに子どもがやってき

て(このような設定の話は、桃太郎やかぐや姫、力太郎など多くの話

がある)、「見るなというタブーを破ったとき、別れが訪れます。生き

るということのきびしさを、幼い人にもくみ取ってもらえたら、と思

います。」という、作者の最後の言葉は、深く心に残るのであります。