みすゞの童謡「空の鯉」で「個性伸長」の授業

 金子みすゞの童謡が道徳の授業によく使われるようになってきました。国語でも同じです。みすゞの温かいまなざし(見方・考え方)を、どの子どもにも学んでほしいと思います。

 

だれでも人をうらやむ心があります。自分のよさや可能性と冷静に向き合わず、人の置かれている状況やよさに(さしたる根拠もなく)あこがれるのです。理想や目標は必要ですが、単なる「隣の芝生・・・」では、ダメですね。

これは、自分のよさを見つめ、伸ばそうとする心情を育てるための授業です。

 

【対 象】 小学5・6年生

 

【ねらい】 「池の鯉」に対するみすゞ思いを話し合うことを通して、自分の長所を積極的に伸ばし、短所を少しでも無くしていこうとする心情を育てる。

    「池の鯉」に対するみすゞの願い・期待を想像することが出来る。(ワークシート)

    自分のよさについて思いを巡らせることができる。(ワークシート)

 

 

【資 料】 「空の鯉」『美しい町』(金子みすゞ全集T 所収)

      JULA出版局  1984.8.25 

http://www.otanisanso.co.jp/okami/misuzu0505.html

 

【学習過程】(45分授業)

 @ みすゞは、池の鯉がなぜ跳ねると思っているのだと思いますか?(10分)

1.       童謡の題名「空の鯉」と1行目「お池の鯉よ、なぜ跳ねる。」までを提示して、まず、「空の鯉」が何だと思うか予想し合う。

2.       すぐに「鯉のぼりの鯉」の発言がある。そこで、「鯉のぼり」の様子や「鯉のぼり」に対して日頃思っていることを自由に出し合う。「気持ちよさそう」「大きくて立派」「大きなものは値段が高いらしい」「かっこいい」「自分もあんな高いところで気持ちよく空を泳いでみたい」などの感想は、そのまま「池の鯉」がもっている「鯉のぼり」に対する気持ちと重なる・・・

3.       でも、町中の子どもたちは、あの大きな(数メートル上空で泳ぐ)鯉のぼりを見たことがないかも・・・50センチメートルくらいのおもちゃのような(アパートのベランダにねじではさんで泳がせるような・・・)鯉のぼりしか見たことがないなら、この童謡を使っての授業は止めるか、ビデオや写真で補うしかないかな?

4.       1〜3までをやって、やっと@の発問です。「池の鯉」が「鯉のぼり」にあこがれている気持ちを想像させます。2で書いた子どもたちの「鯉のぼり」に対する気持ちと同じになると思われますが、自由に様々想像させるといいでしょう。

 

A 「このふたつの□の中には何が入るでしょうか?そして、そう書いたみすゞの気持ちについて話し合いましょう。(15分

1.       4連の「はかない事をのぞむより、/ 跳ねて、あがって、ふりかへれ。」の「ふりかえれ」と部分と、6連の「おまへも雲の上をゆく、/ 空の鯉だよ、知らないか。」の「知らないか」の部分を□にして提示します。

2.       □の部分があるまま、教師の範読、全員の一斉読。

3.       初めの方の□について、話し合う時、「はかない事」が「大きな鯉は、今日ばかり、明日はおろして、しまわれる。」について理解させる。華々しく、だれもがうらやましがるようなことでも、数日の間だけのことでは、あこがれるに足らないことに気付かせる。

4.       「ふりかへれ。」は、すぐには出てこないかも知れないが、次の連の「おまへの池の水底に・・・」に着目させると、案外早く発言があるかも・・・時間をかけすぎないで、教師の方から正しい記述を提示し、その理解を促す。

5.       続いて、二つめの□について話し合う。池の鯉も、空を泳ぐ鯉のぼりと変わらない立派な(「空の」とはそういう意味)鯉だということに気付かせる。

6.       「知らないか」についても、時間をかけすぎず教師の方から提示する。

 

B みすゞがこの童謡で伝えたかったことは何だろうか?話し合ってみましょう。」(10分)

1.       (1)「みんなちがって、みんないい」とよく似てはいるが、こちらの方が、「一層強い言い方」をしていること、(2)それは、「違うのでいい」ということだけではなく、「自分らしい強い、たくましい生き方」をすることが大切であると言っていること、つまり(3)「自分らしい強い生き方をするために、精一杯の努力することが大切」であることを伝えたかったのではないかということに気付かせる。

2.      そのために、「ふりかへれ」「おまへ」「空の鯉だよ」「知らないか」などの強い書きぶりに着目させる。

 

C 「自分よさと不十分さは何か、また、よさや不十分さを伸ばすために自分がしていることは何か、そして、そんな自分をどう思うかについて、プリントに書く。10分)

1.       発表はしないことにします。

2.       よさだけに着目するのではなく、不十分なところにも目を向けて、それぞれを伸ばしている自分観を問う。

3.       「何をどのように」などのように、方法やその出来映えにこだわりすぎると、学級活動になるので要注意。

4.       最後に教師方の話として、「わたしと小鳥とすずと」との違いについて話をしてみるのもいいのではないでしょうか。