東書6年『小さい子からもらった幸せ』で

「ボランティアの心」の授業

 5・6年生、4−(4)「働くことの意義を理解し、社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする」をねらいとした授業です。

 

「社会に奉仕する喜び」を「自分自身の幸せな気持ち」と捉えているところに、この資料の特徴があります。「人の幸せ」=「自分の幸せ」ですね。

 

それをこの授業では、「幸」<「倖」として、落とします。

 

事前に行っている交流活動と関連指導することによって、実感や納得の伴った授業にすることが出来るでしょう。

 

【対 象】 小学5・6年生

 

【ねらい】 主人公「ぼく」の気持ちと自分が体験活動をしたときの気持ちを比べながら話し合うことを通して、社会に奉仕しようとする態度を培う。

    自分の体験を基に、「ぼく」の気持ちを様々に想像することが出来る。(ワークシート)

    話し合いを通して得た「幸せ観」から、自分を振り返ることが出来る(ワークシート)

 

【資 料】 「小さな子からもらった幸せ」

(東京書籍 道徳6年 明日をめざして 32ページ)

http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/kyozai2005/shochu/19001.htm

 

粗筋

総合の時間、月2回ずつボランティア体験活動を行うことになった「ぼく」のクラス。

ある時、ボランティア活動の一つである「保育園での交流活動」に行くことになった。前日は、不安な気持ちになる。

 当日、保育園で、追いかけっこやかくれんぼをするぼく。2回目、3回目、不安な気持ちとは裏腹に、楽しく過ごすことが出来た。

 3回目の交流を終えたとき、「また来てね。待っているからね。」と言ってくれる小さな子どもたちを前に、「ぼく」は「すごく幸せな気持ち」になれたのであった。

 

【学習過程】(45分授業)

 @ 「主人公は、保育園に行く前にどんなことを考えただろうか(15分)

1.       一般的にいうところの導入は行わず、「すぐに資料を提示」。教師の範読2回。そして、この発問です。

2.       「小さい子が自分と本当に遊ぶだろうか?」「自分のいうことを聞いてくれるだろうか?」「まとわりついてきて、遊びにならないのではないだろうか?」「みんなが自分勝手なことを言って、けんかになったりしたらどうしようか?」」「けがをさせたらどうしようか?」などの発言が出るでしょう。簡単に類別して、板書。

3.       出たら、「そうだね。」と受容しつつ、「どうしてそう思うの?」と理由を問い返します。「何となく」と答える子もいるでしょうが、「この前、○○園または○○苑(幼稚園児との交流をしているのなら○○園だし、お年寄りとの交流をしているのなら○○苑です。そのほかの交流相手もあるでしょう)に行く前に自分もそう思った」など「自分の体験を基にした理由付け」も必ず出ます。

4.       出たらその発言を捉えて、少し横道に逸れます。そして、交流前のそれぞれの気持ちなどを思い出させて発言させます。それが、「ぼく」への共感的理解を促すことになります。出にくいようなら、常套手段、その交流の時の「日記」「感想文」「様子の写真」の提示などを端的に行うとよいでしょう。

5.       押さえるのは、@誰かと交流することには不安がつきものである。A特に普段つきあいのない人との交流は不安が大きい。Bしかも、人のためにする交流は、「うまくやらないと・・・」とか「喜んでもらわないといけないな」などの気持ちのため不安が一層大きくなる、の3点です。段階的に板書すると良いでしょう。

6.       その後、「人のために働くことのよさについて考えてみましょう」という本時の課題を教師の方から提示し、板書します。

7.       @価値への気付き、A価値への興味関心、B課題把握がこの文節の学習内容です。

 

A 「交流の後、幸せな気持ちになったとあるけど、具体的にはどんなことを考えたのでしょうか?プリントに書き、話し合ってみましょう。」(15分

1.       いきなり最後の行の「ぼく自信がすごく幸せな気持ちになれた」に着目させます。

2.       前の発問でもそうだけど、「考えたか?」と問うのが味噌です。「どんな気持ちか?」と問うと「不安」とか「うれしい」などという短い情緒言葉が出るだけ。思考や話し合いが深まりません。

3.       資料中の3回の交流場面の「ぼく」の行動や心情を読み取った「国語的」な反応が出てくるでしょう。具体的に記述を押さえずに、「あなたのときはどうだった?」などと、体験を問い返して、その時のその子どもの行動や心情を捉え直させます。

4.       一層深めるためには、「幼稚園の小さな子どもたちはどんな気持ちだったろうか?」などのように、「相手の立場に立たせてみる」ことが有効です。板書で対比的に記録するとよいでしょう。

5.       また、「ぼく」と「自分たち」の行動や心情も対比的だとどちらの方を考えているのかわかりやすいでしょう。」

6.       さまざま考えが出るでしょうが、対比的な板書で、「小さい子が喜んでくれたこと」がそのまま「自分の喜び」になったこと、それが「しあわせな気持ち」であったことを理解できるようにします。これがこの文節の学習内容です。

 

B 「今までの生活の中で、『人の幸せ』を『自分の幸せ』に感じたことがあったでしょうか?」(15分)

1.       関連指導した事前の交流体験だけの振り返りでは、道徳の時間の指導としては、不適切です。広く日常の生活や体験に広げて振り返りを行いましょう。評価のために、プリントに書かせることが有効です。

2.       初めに、再度『人の幸せ』=『自分の幸せ』と板書上で強調します。

3.       そして、「幸せ」は「人」と一緒にいるとき、また、人に喜ばれたときに一層「幸せ」になるのです。だから、「幸」という漢字は、本来は「倖」と書くのです。昔の字ですね。「一層幸せな気持ちは人との交流で生まれる」のです。その人が喜んでくれるなら、もっともっと幸せになるのですよね、と教師から話します。(これがこの授業の、知的な部分での「おち」です。)

4.       導入で示した本時の課題「人のために働くことのよさ」とは、「互いに幸せになる」ってことだと対応させます。

5.       振り返りに、「「今後の課題や希望」があれば書いてください。」と追い指示をして、授業終了です。