絵本『しあわせ』で「明るい心」の授業

 レイフ・クリスチャンソン:文、ディック・ステンベリ:絵のメッセージ絵本『しあわせ』を使った授業です。

参観授業として、保護者も一緒に考えることができる内容をもっています。

  6年生、中学生に相応しい「ネタ本」です。

 

【対 象】 小学6年生、または中学生。

高等学校ホームルームでも可。(その場合は、NHK「しゃべり場」の感じかな)

 

【ねらい】 文意を読み取ったり、続きを作ったりすることを通して、「しあわせ」とはどんなものなのかみんなで話し合うとともに、自分なりの「しあわせ観」を多様にイメージすることができるようにする。

 

【資 料】 絵本『しあわせ』 文:レイフ・クリスチャンソン 

絵:ディック・ステンベリ

訳:にもんじ まさあき

     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4265038654/249-6318960-7476324

 『あなたへ』と題したシリーズ絵本。『しあわせ』のほかにも『ともだち』、『ひとりぼっち』、『うれしい』、『あなたがすき』など14冊ある。

 

粗筋

「しあわせ」とは一体どのような状態を指して言うのだろうか。この絵本は、「しあわせ」とは、「欲しい物を手に入れる」ことか、または「欲しい物を探し求める」ことか、などと相反する概念8つをかわりばんこに示し、読者に「しあわせ」とはどんなことを指すのか考えさせる内容となっている。

大人も読めるメッセージ絵本。

 

【学習過程】(45分授業)

 @ 「みなさんは、どんなときに『ああ、しあわせだなあ』と感じますか?」(15分)

1.       この授業は、上のねらいのところにも書いていますが、みんなが「しあわせ」について「話し合うことそのもの」も目的としています。出てきた「結論」よりも、「過程」を大切にします。

2.       初めに、元気のいい2,3人に自由に(例えば、大好きなケーキを食べたとき、朝寝坊できるとき、テストで100点を取ったとき等々)発言させた後、「ああ、こんな身近なことを言ってもいいんだな、おもしろそうだな」と感じ取らせた後、2、3人組になって、互いに意見交換をさせます。

3.       自由に座席を離れて、いろいろな人と意見交換させても構いません。

4.       その後、10人程度に指名して、板書し、「どれも、しあわせな場面だよねえ」と教師が共感します。

5.       そして、「今日は、『しあわせ』について話し合うことがめあてですよ」と本日のねらいを伝えます。

 

A 「絵本『しあわせ』を読んで、一緒に考えてみようね」(20分

1.       はじめの「太陽」、「勝つこと」、「成功」の3つを読み、対照的に板書します。

2.       「自分は、どちらがしあわせだと思いますか?」などと問いかけ手を挙げさせたり、それぞれのしあわせ度(例えば、「夏の太陽」が3点なら、「雨の後の太陽」は5点などと点数化したり、「夏の太陽」があるから海水浴ができる、作物が実る、「雨の後の太陽」で、洗濯物がしっかり乾く、みんなに待たれている、などと、そのよさを行動や状況で表してみたりするなど・・・)を出し合ってみたりします。ここは、一つ一つの作者の主張を子どもの生活や実感に結びつけるためにとっても重要な活動です。かなり時間を取られるだろうと思います。

3.       3つとも、「どうやら、後者の方が、しあわせに一層近い」ということを理解させます。ここは、教師がきちんと伝えることが大切です。でも、前者もしあわせな状態であることも押さえ、前者を否定しないように留意します。要は、比較の問題、捉え方の問題だと言うことです。

4.       続きを読みます。今度は、後者を予想させる活動にしましょう。

5.       「ほしいもの」、「できること」などで予想を続けます。

6.       予想は、当てることが目的ではなくて、それぞれの「しあわせ観」を出し合うことです。したがって、当たったことはさらっと流して、一人ひとりが自分の考えを出したことをしっかりほめましょう。

7.       「○○君の言ったことがわかる?」「同じようなことを考えた人はいますか?」などと、切り返し、一人の意見にみんなが共感できるように支援します。これがないと、みんなが話し合ったことになりません。

8.       時間があれば、子どもたちの意見で対立した意見を比較してみるのもいいです。

9.       「みんなのしあわせに対する考えは、とってもすばらしいねえ。先生もよくわかるよ。」とそれぞれの考えを受け入れて、Aの活動を終えます。

                                             

B 「続きを作ってみようかぁ」(10分)

1.       「しあわせってなに。○○すること、それとも□□すること。」という文型にあわせて、自分なりの「しあわせ観」をプリントに書かせる。

2.       比較の文型は、かなり高度なので、小学生では難しいですね。その場合は、「しあわせってなに。○○すること」にしてもいいと思います。

3.      「食べること」「着ること」「住むこと」など衣食住のようなベーシックな部分から、学習、遊び、友人関係など幅広く出し合うことをねらいましょう。

4.       導入で出された意見と比較するのもいいでしょう。「しあわせ観」が深まったり、広がったりした例を取りだして、ほめるということです。

5.       どんな意見も否定せずに、互いに理解し合うようにします。

6.       クラスの実態に応じて、また、教師の願いに応じて、「友達関係」など一つのテーマについては、必ず書かせるというのもいいですね。

7.       画用紙などの短冊に書かせて、黒板に添付させるのもいいでしょう。

8.       あらかじめ後ろの掲示板を空けておいて、そこに一人ひとりが画鋲で留めていくことにすれば、即席の掲示が手間なくできて一石二鳥です。

9.       教師が伝えたいメッセージがあれば、全体の前で話すのもいいけれど、子どもと同じように短冊に書いて、掲示するのもいい。

10.   参観日なら、保護者にも書いていただくのもいいですね。