絵本『りゅうのめのなみだ』でやさしさの授業
「相手を無条件に受け入れ、大切に思う気持ち」は、「相手の気持ちも優しく
思いやりのあふれる気持ちに変える」、ということを知らせてくれる名作「りゅ
うのめのなみだ」です。
http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=5981
http://www.parkcity.ne.jp/~yoshioka/ehon/ryu.htm
【対 象】 小学5・6年生(高学年)
【ねらい】 りゅうを愛する子どもの気持ちや行動を話し合うことを通して、
無条件に人を受け入れ、愛することのすばらしさ(やさしい気持ち
が次のやさしい気持ちを生み出すこと)を感じ取ることができる。
【資 料】 『りゅうのめのなみだ』
作:浜田広介 絵:いわさきちひろ 1965年11月、偕成社
(2000年1月 75刷)
【あらすじ】 ある子どもが、母親に反対されながらも、自分の誕生日会にり
ゅうを招待しようと、山奥に訪ねる。一晩野宿をしてりゅうに会
い、誘う。「いってもいいかい。このおれが。」といぶかしがるり
ゅう。
「いいとも、ぼくはおまえさんをにくみはしない。いじめはし
ない。もしもだれかが、かかってきたら、いつだって、かばって
あげる。」堂々とそう言ってのける子どもを見て、りゅうは、「あ
あ、ありがとう。ありがとう。」とあたまをさげて言う。
りゅうの目からはなみだがながれ、川になる。溺れそうになる
子どもを背中に乗せて、川を下る。「なんと、うれしい。こんなう
れしいことはない。わたしは、このままふねになろう。ふねにな
って、やさしいこどもをたくさんたくさんのせてやろう。そうや
って、このよのなかをあたらしいよいよのなかにしてやろう。」と
言うのだった・・・
【学習過程】(45分授業)
@ すぐに絵本を読み聞かせる。 (10分)
A「子どもが『ぼく、ほんとうにかわいそうでならないよ』とりゅうのこと
を心配するのは、なぜだろう?」 (20分)
*
子どもがりゅうを心配する気持ちとお母さんや町の人たちがりゅ
うを嫌う理由を対比して話し合わせる。
*
板書で左右に分けて、「心配する理由」と「嫌う理由」を書く。
*
「心配する理由」は、具体的な表現はどうあれ、「かわいそう」に
まとまる。「嫌う理由」は、「見た目が怖い」「自分たちを飲み込む」
にまとまる。
*
「それぞれが、心配したり、嫌ったりする理由は何ですか?」と切
り返す。子どもは、かわいそうだと思う気持ちからで、りゅうを
無条件に心配していること、そして、町の人の理由には、確かな
証拠はなく、「何となく、みんながそう思いこんでいる」「子ども
をしつけるときに、利用している」に過ぎないことに気付かせる。
*
黒板に「無条件」「根拠なく怖いと思いこむ。利用する」と対比し
て書く。
B
「りゅうが船になったのはなぜだろうか。」 (15分)
*
「子どもの気持ちがうれしかったから、子どもに喜んでもらおうと
思ったから。」「やさしい子どもをたくさんたくさん乗せようと思
ったから。」「この世の中を新しいよい世の中にしてやろうと思っ
たから。」等の意見が出る。(これらは、皆、文章上にある答え。
国語的な読みです。)
*
出てきた意見を皆「そうだね。」と認めながら、再度、「このような
気持ちにさせたのは、何だろうか?」と先生は、尋ねているのです、
と切り返します。
*
「これまで、わたしは、にんげんからただの一どもやさしいこえを
かけてもらったことがない。」や「わたしは、それでひどくうらんだ。
ひねくれた」を引きだした後、「ああ、しかし、それもきょうからや
めるのだ。」という気持ちに着目させて、「こんなりゅうのきもちが
わかりますか?」と迫る。
*
「少年のりゅうに対するやさしい気持ち、りゅうを無条件に受け入
れ、思いやる気持ち」が「りゅうの新たなやさしい気持ち」を生み
出したことを押さえ、黒板に「やさしさがやさしさを生み出す」と
大きく書く。
C 「人からやさしくされて、自分もやさしい気持ちになったことはありませ
んか。」と投げから、教師の体験を語る。 (5分)
*
時間があれば、一人一人の体験をプリントに書かせたり、発表させて
もいい。
*
「やさしさの再生産」「やさしい気持ちは、やさしい気持ちからでし
か生まれない」「やさしさのもとはやさしさ」などと板書しながら、子
どもとりゅうのよさを際だたせる。
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授業後、掲示板などにキーセンテンス(上記下線部)などを添付する。
*
もしも、もっと子どもたちに理解力があるとしたら、また、中学校で
この資料を扱うとしたら、「りゅうの犠牲の愛」について、ふれてもい
いと思います。この物語がこうも人の心を打つのは、「りゅうが船にな
った」からです。「りゅうは人の役に立つためにりゅうでなくなった」
のです。作者 浜田広介は、この絵本の最後で、「まことの愛には、そ
のうらづけに勇気があるということを、この作は意味していましょう。
それと、また、清純な子どもの愛から、世の中の子どものためになろ
うという、大きな竜のギセイの愛が生まれました。一つの善意が、つ
ぎの善意をうんでいくアカシ(証明)を、この作は語っているともい
えましょう」と書いています。