『お別れ会』で許す気持ちを育てる授業

【対 象】 小学校高学年

 

【ねらい】 謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見を大切にしようとする心を育む。

【内 容】

(1)直美の立場に立って、どうしたらいいのか自分なりの考えをもつ。(発言、挙手)

(2)友達を許すことの大切さを感じ取ることができる。(話し合いの様子)

 

【資 料】「お別れ会」(学研 6年)

粗筋

大の仲良しの小原さんが転校するので、お別れパーティーをすることになった。直美は家族とのドライブを断ってパーティーに行くことにしていたが、当日の朝、家族が出かけた後になって、会を延期するとの連絡が入る。もう少し早く言ってくれればドライブに行けたのに・・翌日になっても、腹立たしい気持ちがおさまらない直美が、小原さんと出会う・・・(これ以後は提示せず、最後に読み聞かせ)

 

【学習過程】(45分授業)

 @ 友達関係に思いを巡らせ、本時の課題を知る。(5分)

「友達とけんかしてしまったことはたくさんありますよね。原因はどんなことが多いかなあ?」・・・挙手しての発言を期待しているわけではありません。

 

六年生、友達関係での気がかりは、そうそう人に言えません。ましてや授業での「お披露目」などとんでもない。教師から二、三例示しつつ二、三分時間をとります。

 

そして、一人一人の子どもの中に、具体的な状況が思い出されるのを待ちます。何人かの子どもにはきっと、修学旅行のグループでのいざこざが思い出されていることでしょう。

 

そのことには敢えて触れず「今日は、よりよい友達関係を築くための心の時間にしようね」と教師から、課題提示です。

 

A 昨日の直美の事情を小原さん に伝えるかどうか話し合う。(35分

この資料のよさは、最後の数行にあります。それを敢えて提示せずに「昨日の自分の事情(つまり家族とのドライブに行けなかったこと)を小原さんに言うべきか否か、一人一人が直美さんになったつもりで話し合おう」と投げかけました。

 

   まず、直美の立場に十分共感できるよう事実関係やその時の状況を確認します。「あなたならだれが小原さん?育代さんや幸子さんもいるよね」と自分に置き換えさせます。「家族でのドライブがそれほど楽しみでないと思うなら、もっと心惹かれるものに置き換えてみると気持ちがわかりやすいよ」。

   「言うべき」の方は、「また、同じことがあったら困る」という冷静な考えや「世間話の雰囲気で優しく」という伝え方に関する意見、「友達なんだから事情だけは伝えておきたい」(つまりこれくらいのことで友情は壊れない)という意見などが出ました。

 

   「言うべきではない」の方で最も多かったのは、予想どおり「もう少しで別れてしまうのに、嫌な思いをさせるのはよくない」というものでした。そんな中で、「小原さんも大変だった(小原さんなりの事情がある)」「それを受け止めた方がいい」など相手の立場を理解しようとする意見や「言ったところで小原さんは謝るしかできないじゃないか」という何とも切ない意見(この子は普段こんなこと考えて生活してるの?)が出たのでした。また、「言わぬが仏」や「口は災いの元」等の諺が出たのは高学年だからでしょうか。笑いで雰囲気が緩みます。

 

   子どもたちは、直美の立場を借りて「自分だったらこうする、いやこうしたい」という願いを述べているのですから、私は、「そうだねえ、○○さんならそうしたいんだね。」「それが友達というものかもしれないね」や「相手の事情に思いを巡らせることは大切だよね」「自分だって人に迷惑をかけることもあるよね」などと相槌を打ちつつ、ほんわか本時のねらいをつかませます。

 

 

B 資料の終わりの場面と教師の投げかけを聞く。(5分)

小原さんに不満をぶちまけた直美が最後に「何のためにお別れ会をしようとしていたのか・・・」と自己を振り返る場面をゆっくり読み聞かせた後、「許し許される温かい心のつながりが友達関係には必要なのだねぇ。」と語り聞かせて終わりました。