『おつかいマン』で「家族愛」の授業 【対 象】 小学校 低学年 【ねらい】 主人公との鉛筆対談をもとに話し合い、進んで家族の役に立とうとする態度を高める。 【内 容】(1)主人公と生き生きと鉛筆対談することができる。 (ワークシート) (2)手伝いをすることのよさを感じ取ることができる。 (ワークシート) (3)おうちの人からの手紙に、自分のお手伝いに関することを内容にした返事を書くことができる。 (ワークシート) 【資 料】 「おつかいマン」(日本標準 1年) 【学習過程】(45分授業) @ 「資料を読み、感じたことを発表し合う。」(10分) 低学年では、資料を配布して文字で読むより、教師から語り聞かせる方が有効です。 子ども達の反応を見ながら、話せるからです。 主人公のお面をかぶり、場面絵と重要な部分を書き抜いた短冊を添付しながら語ります。 場面場面で、子ども達のつぶやきを取り上げ他の子どもに広げました。励ましや非難の小さな声が聞こえてきますが、教師は、どんな発言も受け止め認めます。 A 主人公と鉛筆対談をし、お手伝いについて話し合う。(25分) 「主人公とどんなお話をしますか?」 導入のつぶやきをつなげてこう発問し、鉛筆対談に誘います。鉛筆対談には、幾つかの形式が考えられますが、ここでは、「主人公と自分がプリント上で対話をするもの」にしました。 一人の子どもが双方の立場に立って対話を作っていきます。この対話の中にその子なりの価値観(ここではお手伝い観)が出てくるので、道徳授業ではお勧めです。 また、迷っている主人公の立場にも立つので、共感的な理解が促され、温かい(時にはユーモアのある)対話になります。 発表では、「主人公まこちゃん」の言葉は、お面をかぶっている教師が、子どもの後ろでプリントを読むようにして行いました。 「行かなくてもいい」という語りかけをした子どもはいませんでしたが、同じ「行った方がいいよ」という語りかけをする子どもでも、そのわけ(説得理由)は幾つかに分かれます。 主人公の迷いに共感する発言を認めながらも、この説得理由に着目して「鉛筆対談」を板書に整理していきます。 @
グラタンが食べられないから(十五名) A
お母さんが困っているから(九名) B
お母さんが言うことだから(七名) C
小さいころから得意なことだから(二名) D
ほめてもらえるからお遣いに行った方がいい(一名) E
その他 の順でした。 この後、これらの記述や発表内容を本時の学習内容に高めるための話し合いが必要になります。 ポイントは、二つあります。 一つは、発表の後「どうしてそう話してあげたの?」と根拠を尋ねたり、「あなたがお手伝いをしているときには、どうだったの?」などと問い返したりすることです。 前者は@〜Dの繰り返しになることも少なくありませんが、これら問い返しで「関連指導している生活科や普段の生活の時の心の動き」を発表させることができます。 「私は、お風呂掃除が家の仕事で、毎日やることは大変で、やらないときもたまにはあるんだけど、やったらみんなのためになると思うからしている。」や「(自分のしている)洗濯物たたみで、お母さんに喜んでもらえているのがうれしいから」などの発言が出てきます。 これらは先ほどの@Aに見られる内容、すなわち、グラタンが食べられるからやったほうがいいという単なる「結果」や、お母さんが困っているからお遣いに行った方がいいという「現象」からだけで行為(お手伝い)を捉えていたものを、「家族のため」や「自分の喜び」という本時のねらいにまで高めようとする発言です。 これらを大いに認め、黒板に置付けます。子どもの発言をこのように捉え、関連づけ生かすことが、冒頭に書いた「生活科と道徳の子どもの意識レベルでの関連を図る」ということだと考えています。 そして、もう一つのポイントに移ります。 それは、「家族のみんなのためにやってうれしかった(つまり自分の喜びになった)体験やお手伝いを教えてください」と発問し、自分の体験を振り返ることです。 展開前半で出てきた本時のねらいを一層確かにするとともに、そのねらいとする価値から自分を振り返ろうというわけです。 「わかってはいるけどできない」ではなく、「できていたけど、その意味やよさがわかっていなかったことに改めて気づかせる」ということをねらいます。 前向きな気持ちが生まれます。 B おうちの人からの手紙を読み、感じたことを書く。(10分) 生活科の学習の中でも可能です。しかし、この生活科は、お手伝い以外にもチャレンジし「生き生きとした生活することができるようにする」を目標にしています。 どちらで行うか、それぞれのねらいと学習内容に照らしたとき、道徳の時間の方がよりふさわしいと考えられました。 |