日本標準2年『これでいいのかな』で

「動植物愛護」

3・4年生、3−(2)「自然のすばらしさや不思議さに感動し、自然や動植物を大切にする」に関連した授業です。

 

 低学年の読み物資料を中学年で使います。非常に分かりやすい資料ですが、一旦考え出すと大人でも難しい問題を含んでいます。そういう意味では、参観授業に向いているかも知れません。是非、やってみてください。

 

【対 象】 小学4年生(5・6年生でもいいかもしれません)

 

【ねらい】 動植物を大切にしている行為の是非を話し合うことを通して、動植物を大切にする際の判断力を高める。

【内 容】

(1)資料@、C、Aに描かれた行為の善し悪しが判断できること。その理由が示せること(ワークシート)

(2)資料Bに描かれた行為について自分なりの考えをもつこと。(ワークシート)

(3)動植物を大切にする行為の中には、「よく考えた上で何もしない」行為があることを知ること。(表情)

 

【資 料】 「これでいいのかな」

(日本標準 2年 みんなでかんがえるどうとく)

http://www.nipponhyojun.co.jp/katarogu/k10jidou/doutoku/index.html

 

粗筋(動植物に対する4つの行為が紙芝居のように別々に描かれている資料です。)

 

行為@

飼っている金魚が大きくなるように茶碗2杯のえさをやった。

 

行為A

咲きかけているユリの花が、早く咲きたいのではないかと考え、花びらの先をつまんでしっかり開いてやった。

 

行為B

蜘蛛の巣にせみが引っかかっていたのがかわいそうだったので、蜘蛛の巣を壊してせみを逃がしてやった。

 

行為C

きれいな服を着たねこがニャーニャーとないている。

 

【学習過程】(45分授業)@→C→A→Bの順で資料を扱います。

 @ 「@の行為は間違っています。その理由は何ですか?」(10分)

1.       3・4年生なら、だれでも答えることができる内容です。が、形成的な評価ができるように、プリントに書かせます。「間違っている理由をズバリ書いてください。1分です。」と指示します。

2.       茶碗2杯もえさをやったら、「えさの量が多すぎて弱ってしまう。もしかしたら、死んでしまうかもしれない」ことを確認します。

3.       「では、どうすればよいのでしょうか?」と問い返し、「金魚には金魚に適したえさ(食事)の量があるので、それに合った量のえさをやるべきである。」、つまり「相手(動植物)の立場に立った行動をすることが大切である。」を板書で押さえます。

4.       この活動は、本時の導入の役割を果たしていますので、『動植物を大切にするという行為について考えを深める』と本時の課題を色チョークで板書します。「相手の立場(動植物の立場)に立って行動することが大切である」程度のことなら、既に4年生の子どもなら(いや、1,2年生の子どもでも言葉レベルなら)十分に知っていることであります。したがって、「相手の立場に立つ」というのは、本時のねらいや学習内容には入りません。それを前提で学習を進めます。

5.       @(動植物を大切にするという)価値に気付くこと、A(動植物を大切にするってことについて考えることはなかなかおもしろそうではないかいなという)価値への興味関心、B課題(「動植物の立場に立って動植物を大切にする」という行為について考える)把握、の3つがこの文節の内容です。

 

A 「Cのねこは、何と言っているでしょうか?」(10分

1.       時間があれば、ワークシートに書かせても構いません。書かせても2分が限度ですね。

2.       (1)「きれいな服を着ることができてうれしい」という意見と、(2)「服がきゅうくつだ」の二つの意見が出ます。

3.       が、導入で「動植物の立場に立ってということを押さえていること」、「ねこの挿絵が必ずしも喜んでいるような表情をしていないこと」、「4年生という発達段階」から考えると、「余計な御世話」的な意見が多くなります。たとえば、「ねこに立場に立ってみないと分からないけど、しっぽにリボンが付けてあったり、首に大きな飾りが付けてあったりするのは、やりすぎではないか」、「とても寒い季節で、長く外に出ているのなら分からないではないけど、ねこはそもそもたくさんの毛で寒くないようになっている」などです。

4.       「飼い主はどんな気持ちでしょうか?」と視点を飼い主に移動させて、考えさせます。うれしいのはねこではなく、飼い主だという事に気付かせます。つまり、飼い主の都合が優先されているって事です。

5.       ここでは、「相手(動植物)の立場に立つことは、時には難しいことがあることがわかる」ということです。相手は話すことができませんから。

 

B 「Aの行為はどうですか?」(5分)

1.       @、Aをやった後ですから、苦笑いとともに、すぐに手が挙がるでしょう。

2.       「花びらが割けてしまって、悪くすると枯れてしまうかも知れない」ということはすぐに合意できます。

3.       「では、どうすればいいですか?」と返します。「何もしない。放っておく」「じっと見ておく」(しかない)という多数意見の他に、「水をやる」「肥料をやる」なども出るでしょう。

4.       ここは、いろいろあるねえ、と流して、本時のメインに進みます。

 

 C 「Bの行為はよい行為ですか?それとも悪い行為ですか?」(15分)

1.       よいとする考えと悪いという考えが出てくるでしょう。それぞれ理由を発表させながら話し合います。

2.       4年生ならば、思わず蝉を逃がすという主人公の気持ちも分かるでしょうし、逆にそれでは蜘蛛が困るということも分かるでしょう。もしかしたら、たとえ蜘蛛の巣に蝉が引っかかっても蜘蛛は蝉を食べることはできない(蜘蛛の種類にもよるけれど・・・)と主張するものもいるでしょう。

3.       話し合いは盛り上がることでしょうが、最終的には「主人公が思わず蝉を逃がしたくなる気持ちはわかるが」(と一定の理解を共通理解しながらも)「あえて何もしない、というかできない」ということが合意されるでしょう。(低学年なら、蝉を逃がすということはよいことである、と合意されてもいいと思います。そんな発達段階ですから・・・)

4.       「自然(動植物)を大切にするとは、実は、何も手を出さない、下さない、手を出せない、下せない場合がある」(というか、本当は、自然相手の場合は、ほとんどの場合がそうなのだけど・・・余計なことをしているから自然が、生態系が、壊れるのでありますから・・・)ということに気付かせます。(単なる言葉の理解にとどまっても仕方ないと思います。)

 

 D 「今日の授業の感想を書いてください。」(5分)