『梅雨に入った日』で

公正、公平な態度を育てる

【対 象】 中学校

 

【ねらい】 正義を重んじ、だれに対しても公正、公平にし、差別や偏見のない社会の実現に努めようとする態度を育てる。

【内 容】

(1) 就職を断られた兄の気持ちを弟の立場で想像することができる。

(2) 学んだ後、自分の感じたことを率直に表現することができる。

   ・ 自分の足りないものは何か考えることができる。

   ・ 今後の心のめあてを考えることができる。

 

【資 料】 前書きで、落合恵子氏が「今年もまた、素晴らしい作品に出会うことができた。そのことに、まず心から感謝をしたい。ありがとう!」と書いているように、どれ一つとっても、感動する作品ばかりである。

朝の読書、道徳の時間、学級活動、総合的な学習の時間等で活用することができたらいいと思う。

下記アドレスに入賞作文の全文が掲載されている。

 

http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken07.html

 

     どの作品も道徳の時間の資料として提示することができると考えるが、ここでは、「法務副大臣賞」に選ばれた「梅雨に入った日」を取り上げる。

 

【学習過程】(45分授業)

@        資料前半を聞く。(10分)

        「『お母さん、傘買っちゃってもったいなかったね。』この時、お兄ちゃんの感情が僕に押し寄せてきた。」までを読み聞かせる。

        家族関係や就職が叶わなかった状況、事情などを黒板に整理し、理解を図る。

        採用されたときの兄や母の気持ち、逆に断りの電話に出たときの母の気持ちなどを想像する活動を仕組んでもよい。

 

A        お兄ちゃんの言葉を聞いたときの筆者の気持ちを話し合う。(25分)

        発問:「お兄ちゃんの感情が僕に押し寄せてきた」とき、僕は、どんなことを考えただろうか?

        お兄ちゃんの気持ちを弟の立場になって想像させる。

        (1)お兄ちゃんの気持ちと、それを踏まえた上での(2)弟の気持ちの二つを話し合う。

        順序に(1)、(2)の二つの気持ちを書いたり発表したりしてもよいし、(2)を話し合う中で、出てくる(1)の気持ちを別に整理してもよい。

        (1)について。@残念で悲しく、やりきれない気持ち。A工場長さんなどに対する怒り、憤りの気持ち。Bこれから先も就職できないのではないかという不安な気持ち、等に分けながら板書

        (2)について。@ABは(1)と同じ。それに加えて、C兄のために自分ができることは何かについて考えたこと、D兄のがんばりに対比して、自分はどんなことに頑張っているかなどについて考えたこと等、整理して板書する。

        多様な想像を促すが、共感的な理解を図るため、「自分が弟だったらどうだろうか?」と立場を確認したり、「自分が弟だったら、兄にどんな言葉をかけるだろうか?(そもそも兄に言葉がかけられるだろうか?)」などと問い返したりする。

 

B        作文後半を聞き、自分を振り返る。(10分

        (1)、(2)対応して、作文中の内容を確認する。

        「新しい傘を差して出勤をする自分が見えていた」とする弟の受け止めの鋭さは、日頃の弟の兄に対する優しい気持ちからきていることに気付かせる。

        「自分自身に腹が立っていた」とする弟の自分に対する厳しい目が、単に「障害がある人が頑張っているのに対して、障害がない自分のがんばりが足りないことを反省している」のではなく、「兄を守るために。障害を持つ人たちが悲しい思いをしないために。強くならなくてはならない」としていることが価値あることに気付かせる。

        授業を受けて、考えたことをプリントに書く。