総合学習 評価のポイント1,2,3,4,5
(特に福祉の領域を取り上げたとき・・・)

「楽しくて力の付く総合学習」の小ネタ・展開例を紹介する3回目。私なりの視点で
指摘する「ネタのよさ」や「展開のポイント」を、明日からの総合の実践に生かして
いただけたらうれしいです。
 今回紹介するのは、特に、福祉の内容を扱う時のポイントです。単元は、

「おじいさん、おばあさんといっしょに」 〜独り暮らしのお年寄りを支える会と〜
                  (40時間 3年生)

です。
 単元構成の概略は、

[1次]お年寄りと1回目の交流をして、学習計画を立てる(6時間)
[2次]様々な交流(6回)やボランティア学習をする(32時間)
[3次]振り返りをする(2時間)

です。実践の記録は、ここをご覧ください。


    1回目交流の感想を出し合いながら、子どもたちが立てた学習計画
                茶色の字が主な活動計画」

このネタと展開のポイントは

[ポイント] 評価規準を生かす工夫がある

(1)評価の観点は「学び方」だけではない
 評価の観点は「関心、意欲、態度」「学び方」「見方・考え方」などがよいでしょう。
「知識・理解」や「気付き」などがあってもいいです。
不十分なのは、評価の観点として、課題設定能力や情報収集能力、追究力などの
「問題解決能力」にかかわる観点だけを設けることです。
これらは、総合的な学習の時間の「学び方」の観点を中心に、学校教育全体を通じ
て身につけさせるものです。これらの力は、単元レベルでは、その発達、到達が不
明確になりがちです。総合的な学習の時間と教科との違いは、「環境」や「福祉」
など、その「内容」にこそあると考えることが必要です。

(2)知識・理解をこそ大切にする
 福祉を内容にするときに大切になるのが、「知識・理解」です。総合的な学習の時
間は試行錯誤や失敗体験が生かされることが原則です。しかし、「福祉」が内容の
場合は、かかわる相手がお年寄りや体の不自由な方などです。かかわり方を誤れ
ば、大きな迷惑をかけることになります。「失敗」は許されません。したがって、子ども
たちの願いや必要感を引き出しながら、欠かせない知識や理解を学ぶ機会を確実
に授業化することです。

            
                    バリアフリーの学習

(3)知識・理解は体験知でなければならない
 文字や音声言語レベル(つまり単なる情報)で知識や理解を得させることも必要で
す。必要な内容が入っているパンフレットやハンドブックなどで基礎的な知識を得さ
せます。でも、それだけでは不十分です。その知識を生かそうとして行動したときの
実感を引き出しながら、知識を体験化することが必要です。また、高齢者疑似体験な
どで、まさに、体験を通してお年寄りや体の不自由な方の身体を感じなければなりま
せん。

        
        高齢者疑似体験セット(耳栓やゴーグル、手首のお
         もりなど)を付けて、計算ドリルをやっている子ども

(4)「できているけど分かっていない」を取り上げる
 (3)の「知識を生かして行動したときの実感を引き出し、知識を体験化することが大
切」と述べたのは、この「できているけど分かっていないを分からせる」ということと同じ
です。「分かっているけど、できない」は大人の問題であることが多いです。「○○さん
は〜がまだできていないね。〜は大切だから、次はがんばろうね」のような振り返りや
評価は、「到達点を予め定めた教科」と原理が違う総合的な学習の時間では、ふさわし
くない。ましてや相手が「人」である「福祉」の内容の場合は、不適切。
 逆説的ではあるけれども、かかわりの場面で「子どもが自然にできていることの意味
や価値を分からせること」の方が有効です。振り返り活動で、それを取り上げます。そ
うすれば、体験を通した知識が生まれます。意欲や見方・考え方も高まります。
 たとえば、「○○君が、△△おばあちゃんに楽しそうに笑顔でお話ししていたのは、お
ばあちゃんにとってとってもうれしいことだよ」「□□さんが、おばあちゃんと手をつない
で歩いていたよね。おばあちゃんは安心して歩いておられたよね。」などです。

(5)評価規準は、結局、具体的な子どもの姿で想定する
 結局、評価規準は、「具体的な子どもの姿」で単元構想することになります。たとえば、
「関心、意欲、態度」は「楽しそうに笑顔で話す」、「学び方」は「お年寄りと手をつない
で交流活動をする」などです。学習指導要領レベルの文言で「内容や評価規準」を「明
文化」することは最低限必要です。が、それに加えて、「笑顔」「手をつなぐ」など最も「端
的な子どもの姿」を指導案に記述すると、単元構成も支援も考えやすいと思われます。

◆福祉の内容を扱った総合的な学習の時間の実践には、この実践もあります。
本実践と合わせてご覧ください。小学生としては、最も難しい「介護体験学習」を扱っ
ている単元です。