新しい道徳の時間の方向(キーワードで考える)

キーワード1     納得と実感
 豊かな体験(例えば、ボランティア活動や自然体験など)を通すことによって、児童の内面に根ざした道徳性の育成を図る必要がある。(内面に根ざすとは、道徳的な価値の自覚化と考えてよい。)
 豊かな体験は、道徳的な価値の自覚化を促進する。納得や実感のない価値把握は、単なる知識でしかない。

キーワード2     みんなで
 道徳的な時間の指導は、担任だけで行われるべきものと考えてはならない。児童理解の最も進んだ教師は言うまでもなく担任である。その担任は、その理解をもとに、道徳の時間の中で、いろいろな人と出会わせる工夫や努力をなすべきである。管理職はもとより、学校の他の教諭や職員、保護者、地域の方々などと、意図的計画的に道徳の時間に出会わせることによって、道徳的な価値の自覚化や、道徳的な実践力を育成することが急務である。

キーワード3     前向き
 道徳の時間では、扱った道徳的な価値に照らして、自己を振り返ることが必要である。「不十分な自己の自覚」を感じさせることも重要であるが、道徳的な価値を自分なりに発展させていくことへの思いや課題(心のめあて)を培うことも重要である。
 自覚化された道徳的な価値が目に見える行為として現れることを期待することも大切だと考える。そのことは、押しつけることを意味するのではない。後の自分のどんな行為にも影響を及ぼさないような道徳的な価値の自覚化や道徳的な実践力の育成はあり得ない話である。

キーワード4   事実・実生活
  子供は、具体的な事実から道徳的な価値をとらえる。そもそも道徳的な価値とは、記号や文章ではなく、一人一人の人間の生活のこまごました行為や感情の中にあるものである。道徳の時間に行われる道徳教育は、生活や事実とかけ離れていてはならない。道徳の時間の前後には、その子その子の具体的な生活があり、それと結ばれていることによってのみ価値の自覚化が可能である。豊かな体験によって感じられる「納得や実感」は、最終的には、事実や実生活の中でも感じられなければならない。